Solid State Logic(SSL)
AWS924/AWS948

InterBEE2010でもその発売がアナウンスされていたAWSシリーズのニューモデルのセミナーに行ってきました!!

Chris Jenkins氏とSolid State Logic AWS948

電車の数が少ないつくばから行くのでやや早くつきました。会場はSolid State Logic Japanデモルームです。中に通してもらうと今回のデモンストレーター Chris Jenkins氏がAWS948でセットアップ中です。いかにも英国紳士と言う感じのJenkins氏と簡単に挨拶を済ませ、写真を撮影させてもらいました。
今回音源として使用していたのはJenkins氏の上司、かのPeter Gabriel氏から拝借(?)してきたというソースでした。

さて、今回発表となるのはAWS924とAWS948の2機種です。AWS924はAWS900SE+にA-FADAという機能を追加した製品です。AWS948はその名のとおり48入力が可能なワークステーションです。

今回会場にあったのはAWS948のみでしたが、入力数をのぞけば大差はないとのことですのでAWS948に焦点を絞ってみていきます。

Chris Jenkins氏とSolid State Logic AWS948今回I/Oに使用していたのはやはりSSLのDeltaLink 1台とAlphaLink x2台、AlphaLinkは1台で24chのI/Oとして機能しますが、AWS948が48入力可能となり、デモンストレーションの音源も24trを超えたため用意したとのことでした。

Product Overview of AWS948

AWS900シリーズの製品ですから基本敵な設計はAWS900を踏襲しています。ですので基本敵な部分に関してはAWS900+Demonstration & Seminarをご参照ください。それを踏まえていくつかAWS924/948になって新しくなった部分を見ていきたいと思います。

Channel Strip

Channel Strip of AWS948

AWS948は48入力ですが、フレームのサイズは今までのAWSと変わりありません。鋭い人は「すべてがステレオ入力?」と思うかもしれませんが、半分正解です。正しくは24モノラルから24ステレオまで柔軟に入力可能という状態です。ですのでステレオ入力という表現も間違ってはいませんが、

ステレオカップリングも可能なデュアルモノラル入力を1つのモジュールに搭載

と言う状態でしょう。

ステレオ入力時にはステレオ入力になりますがデュアルモノ入力時にはいわゆるIn-Lineの状態となります。そうです。SL4000Gや9000J/Kなどでおなじみのインラインです。

AWS948以外の場合にはDAWのコントロールを行うことによって擬似的なインラインコンソールのように使用できますが、AWS948は純然たるインラインコンソールとして使用できます。InputにEQををかけるのかMON信号にEQをかけるのかをセレクトすることも可能です。SSLを操作したことがある方なら違和感なくそのコンセプトが理解できると思います。

AWS948のようなステレオも可能なインライン構造にするとEQなどのプロセッシングはすべてステレオに対応させないといけなくなりますが、Dyn,EQともにかなり緻密に設計されているとのこと。しかもステレオで使用されてもモノラルで使用されてもいいように吟味を重ねたとのことです。

ちなみにこのStereo EQはXR727 X-Rack Stereo EQ Moduleと同じ回路で構成され、MidBand x2とShelving High/Lowにそれぞれ独立してG EQ,E EQをセレクトできるようになっています。

また、インライン使用時にいわゆるSmall FaderとSmall Panと呼ばれていた、もう1本の信号のレベルとパンをコントロールするコントローラも必要になります。さらにAWSシリーズはDAWコントローラー機能を搭載していますからそれも賄う必要もあります。

それを実現するためチャンネルストリップはコントロールの仕方が(見た目的には)EQの手前で変わっています。EQやGainはいわゆるアナログコントロールなのですがCueセンドから手前は一部デジタルで制御されています(ロータリーエンコーダーなどはイメージしやすいですね)。

この仕様によりインラインコンソールでかつDAWコントロールも可能、というハイスペックをこのサイズで成し遂げている感じです。

各モードでの役割を簡単に記載しておきます

Stereo Mode

Fader
Monitor Levelのコントローラーとして機能
V-Pot
L/RのBalance potとして機能
PAN
Wideコントローラーとして機能。モノラルからワイドステレオまで。

In-Line Mode

Fader
INPUT Levelのコントローラーとして可動(FLIPによりV-Potと機能を入れ替え可能)
V-Pot
MON Levelのコントローラーとして機能(FLIPによりFaderと機能を入れ替え可能)
PAN
Input Panとして稼働。MON信号のPANはMain Panに従うかどうかを選択可能
(V-Pot:ディスプレイのすぐ上にあるロータリエンコーダの名称です)

さすがです。なかなか考えられています。むやみに躯体を大きくすること無く必要な機能を詰め込んでいくにはデジタルは便利ですが、あくまでデジタルコントロールであって、音声信号はアナログのまま扱うというところにSSLの信念が見え隠れしているようです。

A-FADA

さて、今回AWS924/948になっての最大の注目点と言えるA-FADAですがAnalogue Fader Accesses DAW Automationの頭文字をとったものです。

パッとその字面を見た感じではいわゆるフィジコンと何ら変わらないように見えますが違います。DAWのオートメーションでAWSのFaderを動かせるのです。その逆もしかりです。で、ソースの出処はAUX sendsなどからPreFaderでパラ出だしておけるのです。

DAWのオートメーションを、信号と無関係な状態にして、それでAWSのFaderをコントロールする、というのがA-FADAの説明としてはいいのでしょうか

信号経路をたどるとその違いがはっきりするかもしれません。

Physical Contoller Mode
HDD→DAW音量プロセッシング→I/F→AWS input →AWSサミング回路
A-FADA
HDD→I/F(UnityGainで出力)→AWS input →音量プロセッシング→AWSサミング回路

デジタルはというかPCMはどうしてもデジタルドメインで音量を絞ると解像度が低下します。それをUnity出力にしておくことにより解像度の高い状態をSSLのアナログ回路に入力できます。それをアナログサミング出来るのですがら仕上がりの差は歴然だと思います(先日4 Stereoでアナログサミングしただけでも結構違いましたから)。

フィジコンとの一番大きな差は信号が実際に流れているかどうかの違いでしょう。SSLのSL9000JのキャッチにDigital Controlled SUPERANALOGUE™ Consoleというのがありましたがそのとおりです。オートメーションはDAWが記憶し音声はアナログ回路を通る、という、行ってしまえば昔からのコンセプトですが、これをDAWと絡めてうまく昇華させることができるのはさすがにSSLなのでしょうか。

もちろんAWS自体にもAWSomationというオートメーションは搭載されています。慣れている方を使えばいいと思いますが、昨今のプロジェクトスタジオを点々とする製作環境という観点からはsession fileに一体化できるA-FADA機能は重宝しそうですね。

様々なMixの形態が考えられますね。In the Boxと呼ばれるPC内部のMix,DAWをレコーダーとして使用した昔ながらのMixing、そしてA-FADAを使用した、いわゆるDAWをレコーダー,オートメーションレコーダーとして使用したMixing。

同じオートメーションを走らせてアナログサミングの解像度の高さなどを体感してみたく思います。

実はこのA-FADA,昔「こう言う事ってできないですかねー」と某メーカーに相談したことがあるのですが,その時は「うーん,無理だと思います」と言われた僕のアイデアがカタチになっていて,正直びっくりしました。まぁ基本は同じなのですがAWSはそれをもっと高い次元で実現しています。

Afterwords

以前Donovan Stark氏がデモの時に「AWS900はDAWに真っ向からぶつかるものではなく、DAWを用いた音楽制作に、SSLが培ってきたアナログの処理技術を融合させるものだ。だから、DAWを選ぶこともしないし否定することもしない。これがあればOKなのではなく、DAWと融合させることにより、より良い音楽制作の環境が作れる。」としゃべっていましたが、今回AWS924/948をみてその方向性はさらに深まっているように感じます。

DAWも進化していますからIn the Boxでも充分なMixを完成させることは可能だと思いますが、AWSを用いてより解像度の高いMixing、いわゆるベストなMixを完成させることが可能だと思います。

Solid State Logic(SSL),AWS948 画像

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checker:Takumi Otani

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