Solid State Logic (SSL)
XL-Desk Vol.1

あけましておめでとうございます。2017年も製品レビュー頑張っていきますのでよろしくお願いします。そういえば2017は素数ですね。

さて、2017年の記念すべき最初の製品レビューはRecording Consoleです。若干今更感のある製品ですが今回はSolid State LogicのXL−Deskを取り上げてみたいと思います。

今回は借りて試してみたのではなく、XL-Deskを導入したスタジオのWiringを担当させていただきました。ただ、単純にDB25ケーブルを納品させてただいた、のではなく、スタジオオーナー/エンジニアの古屋博敏さんと一緒にパッチベイのRoutingなどを更新していった次第です。
ご要望をいただきPatch BayをPlanningし納品、しばらく使っていただき、リクエストをいただきPlanを更新を数度繰り返してきた感じです。

大きなX−Deskに500Slotが入っている、という印象を持っていたXL−Deskなのですが、さすがにSSLよく考えられています

早速見ていきましょう。

Product Overview of XL-Desk

I/O

まずI/Oから見ていきましょう。

名称回線数*1コネクタ形状説明
Mic Input8DB25 FemaleCh1-8のVHD HAに直結された入力です。
Line Input8DB25 FemaleCh9-16に直結されたLine Level対応の入力です。
Stereo Inptut 1-48DB25 FemaleCh17-24のステレオチャンネルへの入力です。Line Levelです
500 send16DB25 Femalech1−16の信号を本体の500 Slotに送るための出力です。
初期状態では500 slot inputへと直結されています。
500 slot input16DB25 Femalech1-16の500 slotの入力です。
初期状態では500 sendと直結されています。
500 slot output16DB25 Femalech1-16の500 slotの出力です。
初期状態では500 Returnへと直結されています。
500 Return16DB25 Female500 slotの出力をチャンネルストリップ戻すための入力です。
初期状態では500 slot outputと直結されています。
Insert send16DB25 FemaleChannel insert sendです。500 returnの後段に位置します。
Insert Return16DB25 FemaleChannel insert Returnです。
DAW input16DB25 FemaleDAWからの信号を入力します。channel stripの[DAW]でMic in/Line inと切り替わります
Channel Output16DB25 FemaleCh1−16のDirect Outputです。
Stereo Out 1-48DB25 FemaleCh17-24のStereo Ch Direct Outputです。
MIX A B C D Insert send8DB25 Female4つのMix busのInsert sendです
MIX A B C D Insert Retrun8DB25 Female4つのMix busのInsert Returnです
MIX A B C D Out8DB25 FemaleMix bus A-Dの出力です。
Monitor Output7DB25 FemaleMain monitor L/R, Mini monitor1 L/R, Mini monitor2 L/R, Subの出力です。
MISC. Input6DB25 FemaleStereo Return1 L/R, Stereo Return2 L/R, External Input L/R,
MISC. Out17DB25 FemaleStereo Return Out 1L/R, Stereo Return Out 2L/R, Meter L/ R; Listen Mic Out(Post Comp)
MISC. Out28DB25 FemaleFB A L/R,FB B L/R, Cue stereo L/R, Aux1, Aux 2
Monitor L/R2XLR Maleモニター出力です。Main L/Rと同じ信号です
Listen In1XLR FemaleListen Micの入力です。

*1:モノラル換算

上記以外にHeadphone出力とiJack入力が備えられています。本体にもT/Bマイク搭載しています。

Rear Pannel

次は背面です。と言っても上記I/Oコネクターとの設定用のDIPスイッチ,電源コネクター,スイッチ位です。大きな放熱フィンが頼もしいです。電源コネクタはIEC C14ですのでお気に入りの電源ケーブルに差し替えが可能で電源自体は100-240Vのユニバーサルです。

Top Pannel

次はパネルを見ていきましょう。

Ch Fader構成は16モノラル+4ステレオで右のほうにMastre Sectionがあります。ここにはStereo Return やT/B、Monitrの機能がまとめられています。

500シリーズスロット

XL-Deskの最大の売り、と言える部分かもしれませんが18基(16+2)のVPR allianceスロットを装備しています。
1-16は基本的に各チャンネルに対応しており、各chの[500]ボタンを押すと500 Slot Retrunの信号に切り替わります。各chの信号は500 Slotに常に送られています。この辺は後述します。

では17/18に相当する500 は何かというと、通常のミキサーのMastre Outputに相当するMIX AのInsertとして使用可能です。本体トップパネル写真のMIX Aの部分を見えていただくと、[500],[INS],[SUM],[Comp]という4つのボタンが確認できますが、[Comp]を押すと17/18のスロットにインストールされたモジュールの信号に切り替わります。通常はG−series Compだと思いますが、お気に入りのステレオEQやその他のトータルコンプに差し替えることも可能です。ちなみに上部の[500]を押すと9/10のモジュールの500シリーズがインサートされます。MIX B−Dも同様に11/12,13/14,15/16がインサートされます。

奇数チャンネルtと偶数チャンネルでSide-Chainのリンクを組むことも可能です。

500Slotの役割は

  • 500モジュールに電源を供給する
  • I/Oになる

ことだと思いますが,前者は非常に重要で電力不足にならないように質の良い電源を供給するできるslotが優秀なslotといえます。

電源の重要性に関してはiFi-Audio iPowerKOJO TECHNOLOGY Aray6 MKIIなどをご参照いただければと思います。

SSLのスタッフと話したことがありますが,やはりslotを交換すると音は変わる,とのことで,XL-Deskには独自のハイスペックな電源が内蔵されているとのこと。

Channel Strip

さて、Channel Stripに応じて信号の流れを見ていきましょう。

Channel 1-8

ここの入力はI/OのMIC Input 1-8から供給され、VHD Mic Preに直結しています。VHD Mic Preの詳細はVHD Pre module For API 500 format racksXLogic E-signature Channelをご参照ください。

この後信号はTRIMのセクションに入ります。TRIM sectionはchannel stripの入力信号の切り替えとLevel管理を行う部分で-20dB ... +20dBの連続可変ノブ、信号レベルLEDと[DAW],[φ],[500],[INS],[CHOP POSTとボタンが並んでいます。
LEDは3色で信号強度を表しますが、本体のLevel Calibration切り替え可能です。Level Cal.はマスターメーターにも影響します。

色が示すレベルは

LED colour+24dBu scale+18dBu scale
Green-24dBu ... +4dBu-24dBu ... 0dBu
Yellow+4dBu ... +21dBu0dBu ... +16dBu
Red> +21dBu> +16dBu

です。

DAW
後段に流れる信号をDAW Inputの信号に切り替えます。TRIM ノブの前段に配置されています。
φ
説明不要ですね。位相を反転させます。
500
後段に流れる信号を500 Returnに信号に切り替えます。500 sendは常時出力されています。
INS
後段に流れる信号をInsert Returnに信号に切り替えます。Insert sendは常時出力されています。500 Insertの後段に配置されています。
CHOP POST
Direct outのポイントをPost Faderに切り替えます。

このことからXL-Deskのモノラルチャンネルは2系統のインサートポイントを持っている、と言えます。

ライン入力させたいときなどは500 Returnに入力すればHAにをバイパスできます(TRIMは効きません)。

それがどうした、と言われそうな気もしますが、バックアップでレコーダーを回す時など、どこかで信号を分岐させる必要がありますが、そういった時などには非常に便利です。500 inseretでベーシックな音を作り INSERTとDirecto Outでそれぞれ別のレコーダーに信号を分岐すれば問題ありません。

MIDAS XL48Antelope Audio MP8dのようなspliter機能を持つHAもありますので信号分岐のためにXL-Deskを買う方はいらっしゃらないと思いますが(その目的で検討中の方いたらゴメンなさい)、やはりConsoleがあると色々作業が早いです。

この後信号はCue,AUXのセクションを経由しChannel Faderを経由*2した後、MIX A-Dへのバスアサインスイッチでアサインされたバスへサミングされます。

Channel 9-16

ここはHAがないことを除けばch1-9と同等です。

500シリーズにはHAも多く発売されていますがSlot9-16にHAモジュールを入れて使用する際にはご注意ください。前述の通り500スロットへのSend/ReturnはTRIMノブの後段にありますので初期状態のまま500スロットにHAを組み込んで+48Vなどを送ると悲惨な状態になります。

Ch1−8も同様です。ただ、ch1-8にはVHD Preが搭載されていますのでここにHAを仕込む方はいらっしゃらないと思います。

500 slot 9-16に500シリーズ対応HAを組み込んで使用する場合にはマイクの入力を500 slot in 9-16に接続してご利用ください。Ch9-16の[500]を押すことでHAからの信号がFaderに立ち上がります。HAモジュールのフロントパネルにXLRがある場合にはそちらを使ったほうが間違いが無いように思います(ちょっとカッコ悪いですけど...)。

500シリーズ対応のHAをお持ちの方は外部の500スロットをご使用いただいたほうが良いかと思います。

そのほうがTRIMノブの前段にHAを配置することによりHAをドライブ気味に設定しTRIMでLevelを調整する、と言うことも可能になります。

Channel 17-24

Ch17−24はステレオ経路であること、500 Insert, External InsertがないことCueの[ALT]がないことを除けば他はCh9−16と同様です。

ここでCh1-16のCueに搭載されている[ALT]の説明をしておきましょう。X-Deskをお持ちの方は「ああ、あれね。」となるかもしれません。

[ALT]とはAlternativeのことでST Cueにもう一つの入力信号を立ち上げることができます。もう一つのの信号とは[DAW]が押されている時にはMic/Line inputが,[DAW]ボタンが押されていない時にはDAW inputの信号です。これらを駆使することにより、XL−Deskでは32モノラル(Channel input x16+ALT input x16)+6ステレオ(=ST in 1-4+ST Return1,2)を、更には裏技的にMix A-D Returnに信号を入力すれば32モノラル+10ステレオをアナログサミングすることが可能です。


*2:MDACテクノロジーが使用されているので厳密にはFader内にはアナログ信号は通っていませんが、イメージしやすいので上記の表現にしてあります。

Mastre section

信号の流れに従ってMastre sectionを見ていきましょう。

一部は既述になりますが、ご了承ください。

奥から見ていきますと、Stereo Return1,2のノブが配置されそれぞれ」A-D MIX BUSにアサイン可能です。また、モノサミングも可能です。その右にはStereo Cue, AUX1,2,MIX B-Dのマスタートリムが並びます。

ST Cueは先ほどの通り[TO A]を押すことでMIX A BUSにサミング可能です。

手前側に移って、MIX B-Dのマスターですが、[500],[INS],[SUM],[TO A]をボタンが配置されています。[500]ボタンはI/Oのところでも触れましたが、それぞれ11/12,13/14,15/16の500モジュールにインサートされます。その場合にはChの[500]ボタンは無効となります。

さて、さらにその手前はSOLO Masterが並びその手前にはMONitor SELECT, MONitor SOURCEの選択、ヘッドフォンの調整などのFoldback,tackbackなどのセクションです。ちなみにST Cue outにはTalkbackは送れません。F/B A,Bにのみ送出が可能です。Listen Micの音量もここで調整可能です。Listen MicはMonitor secrionに送られます。

XL-Deskでは3種類のモニタースピーカーを使用可能ですが、複数のモニターを使用する時に問題になるのがその音量の差です。XL-Deskでは各モニターの音量ノブは表面には出ていませんが内部で0.5dBステップで調整が可能です。

スピーカー本体のノブを操作すれば良い場合もありますが、調整に限界があるスピーカーもあったり、やはりアナログのノブは12時以上のポジションで使ってあげたほうが解像度が高いですから試してみる価値はあります。

Meter

最後にメーターを見てきましょう。

MIX A-D BUS のSutereo Peak Meterが4列並びます。20セグメントでMaxは0dBで、0dB=+24dBu/+18dBuを背面のDIPスイッチで切り替え可能です。


さていかがでしょうか。

AWSシリーズやMatrix,Dualityと比べると少し異質なコンソールです。500シリーズをうまく組み込むことにより作業目的にあったConsoleを作り上げることが可能です。Automationなどは書けませんのでDAWとの併用、という部分が大きくなると思います。であればフィジコんでいいじゃないか、という声も聞こえてきそうですが、アナログアウトボードを多く持っている方などはどうせならMixでも使えれば良いと思いますし、物理的な操作子がありますので作業も早く、(これは僕だけかもしれませんが)楽しいです。

Recording Consoleなので、しかも、SSLが作った製品なのでサイズの割りに多機能です。
やはり実際に触るのが一番なのですが、いきなり買うのはちょっと、という方の参考になればと思います。

Afterwords

一気に書いてしまおうかと思ったのですが、以外と文量が多くなってきましたので分割して記載していきます。Vol.2では古屋さんのスタジオのpatchを紹介し、僕が自分の仕事で使うとしたらどのように500Slotを埋めるかみたいな観点から書いていければと思います。

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