MIDAS
PRO2/PRO2C
Bestec Audioさんのご好意によりMIDAS PROシリーズのPRO2とPRO2Cを試すことができました。PRO2Cは解説付きで,PRO2は実際のLiveで試すことができましたのでその時の様子も交えつつ,数回に分けて書いていこうと思います。
今回はPRO2/PRO2Cの基本的なスペックなどについてです。
Product Overview of PRO2C Touring Package
今回試せたPRO2/PRO2Cにはどちらも"Touring Package"と"Install Package"が 存在します。最も大きな違いはFLIGHT CASEが付属するかどうかです。PRO2Cのフライトケースを店頭で見ましたが重量が60kg前後あるとのこと(PRO2C本体は37kgほど),日本国内で使用する分にはオーバースペックな印象もあります。本国からそのFLIGHT CASEに入った状態で出荷されてくるとのこと。うーん,ワールドワイドコンソールメーカーは違いますね。確かにワールドツアーなどで空輸した時に到着して「運送事故で動かない」というのは許されないのでしょう。緩衝材が綺麗に配置された専用ケースで,USB keyboardなどの収納できます
ちょっと大規模になるかもしれませんが両機のスペック(抜粋)です。
PRO2
- バス
- 27バス
- 入力
- 64 inputs/56input + 8Aux RTN
- 入力端子
- 56input(I/O Box=48,Control Surface:8)
- 出力
- 24出力
- AES/EBU
- 2入力/1出力
- Ch Fader
- 最大24(8x3)
- サイズ
- 1179.6W x 730.3D x 247.9H[mm]
- 重量
- 46kg
PRO2C
- バス
- 27バス
- 入力
- 64 inputs/56input + 8Aux RTN
- 入力端子
- 56input(I/O Box=48,Control Surface:8)
- 出力
- 24出力
- AES/EBU
- 2入力/1出力
- Ch Fader
- 最大16(8x2)
- サイズ
- 882W x 730.3D x 247.9H[mm]
- 重量
- 37kg
PRO2/PRO2CのシステムはコントロールサーフィエスとI/O BOX DL251からなります。これらをcat5eのケーブル(最大100m)で接続することによりコンソール側とステージ側の接続は完了です(ProtpcalはAES50)。1本で48ch双方向のやり取りが可能です。56inですのでフルに入力を利用する場合には2本必要です。3本目を接続することも可能で,バックアップ回線として作用します。これが一体となっており,PRO2/PRO2C共に"DIGITAL MIXING CONSOLE"ではなく"LIVE AUDIO SYSTEM"と書かれています。
またコントロースサーフィエスにもXLR in x8,XLR out x8のアナログ入出力が装備されていますのでお気に入りのアウトボードリバーブなどをシステムに組み込むことが可能です。
システムは96kHz,40Bit Floating処理とのこと。OSはLINUXベースとのことです。
PRO2とPRO2Cの一番大きな違いは左側の8本のFaderの有無です。XL8からPRO2Cまでファームは同じですので処理などによる音色の差はありえません。I/O BOXによる音質差はさすがに多少あるものの,それも僅差とのこと。PRO2/PRO2Cの音質の高さが伺えます。
内部処理DSPの性能が許す限り,機能を詰め込むことが可能ですので,今後も世界中から集まるリクエストに柔軟に対応していきたいとのことです。
ここまで来ると,上位機種との違いは操作性といっても過言ではないでしょう。
さて,いよいよPRO2とPRO2Cのコントロールサーフェイスを見て行きましょう。
まず目を引くのがPRO2だと中央,PRO2Cだと左側に配置された高解像度Displayです。手前のFaderとつながっている関係にあり,対応するFaderの
- HA section
- Dynmics section
- EQ section
- AUX send
を表示します。直射日光の元でも視認性が高いと思います。
画面内 右側には選んだチャンネルの選んだセクションの状態が表示されます。
画面右側に移りましょう。
ここにはchの各セクションをコントロールするためノブ/ボタン類が並びます。Detail Stripと呼ばれるセクションです。
YAMAHA M7CLと同じようなコンセプトだと思いますが,XL8では全ての操作子が並んでいましたがさすがに幾つかコンパクトにまとめられています。ただ,さすがに考えられておりストレスなく操作が可能です。
各chのプロセッシングをDetail Stripにそってもう少し見て行きましょう。
Detail Strip
一番上には"channel safes"のセクションがあります。他のチェンネルの設定を呼び出したりメモリーを呼び出したりした時に上書き/呼び出しを無効化するセーフ機能です。
- EQ
- DYN
- MIC
- AUTO
- MUTE
- FADER
が選べます。
その下にはFilter section,HAセクションがあります
その下はDynamicsのコントロールです。
attack/release/Hold/Ratio/Threshold/Make upのコントロールがすべて可能です。Comp/Gateは同じレイアウトになっており,同時にコントロールは出来ませんが簡単に切り替えが可能です。
サイドチェインのセクションを挟んでEQセクションです。
操作のためのノブは1バンド分しかありませんがFull-parametric EQなので gain/width/greqがコントロールできます。
またEQとDynの順番を入れ替えることも可能です。ただ,GATE+COMPでDYNなのでGATE→EQ→COMPという設定は出来ません。僕個人はあまりGateを使わないので気になりませんが,そうでは無い方もいらっしゃると思います。
一番手前にはPANと[ST](ereo)と[MON](o)へのアサインボタンがあります。
これらの操作子には静電センサーが搭載されており,触ると画面が切り替わります(Preferenceで変更可能)。膨大な機能を持つだけに,「自分が今どこにいて何を操作しているか」が瞬時にわかるのは非常に大事だと思います。
またセクションの左にはそのセクションのバイパスボタンが装備されています。
さて,+48Vの上の[TALK]ボタン,コレは何に使うのでしょうか。写真右のAUX のセクションにも見えます。AUX,MATRIXのセクションにもズラリと並んでいます。勘の良い方はなんとなくわかっていただけるかと思いますが,
本体右のTalkbackに入力した信号をこの[TALK]が押されたChに一時的にアサインすること
が可能な機能です。
最初は「なくてもいいのでは...」と思いましたが,なかなかどうして,大規模なモニターになってくるとすべての回線に同時に音声が出力されると,逆にリハーサルの進行を妨げる場合もあるでしょう。
またInputにアサインできることにより回線の抜き差しを行うことなく処理の確認などが可能です。
さすがに考えられています。
その右にはAUXs センド用のノブが並びます。8個あります。手前側にUp/DownのボタンがありますのでこれでAux9以降へのセレクトが可能です。
更にその右にはAUX/Matrixのマスターセクションがあります。
その手前のFaderはOutup Faderに対応します。この部分もch Faderとして作動させることが可能ですし,左側のセクションまでoutput Faderを拡張することも可能です。
更に右にはMasterのL/R monoのFaderが用意されています。
さて,この膨大な数の入出力をこれら16本のFaderでコントロール可能なのでしょうか。
もちろん限界はあると思いますが,各ターゲットのチャンネルに瞬時にアクセスする工夫があります。それが"VCA"と"POP"です。それぞれ,Variable Control AssociationsとPOPulationの略です。さすがにVoltage Controlled Amplifierではありませんでした。
VCA,POP共に色で識別でき,非常に便利です。どちらもCh Faderのグループの呼び出し機能を持ちますが,VCAはそれにMasterという発想が伴います。いわゆるch Faderの呼び出しとVoltage Controlled Amplifierを併せ持つ機能だと思っていただいて良いと思います。どちらも1本から登録可能ですが9以上となるとFaderをスクロールするか,右側にEXTENDしてやる必要です。
これらを駆使することによりストレスの無い操作が可能な印象です。VCAとPOPをどうのように組むのかセンスが問われそうですね。
さて前後しましたがAUXに一旦戻りましょう。こちらはFLIPというボタンで手前のFaderにチャンネルの送りの量を表示させることが可能です。YAMAHAのコンソールでは"SENDS ON Fader"と呼ばれる機能です。
最後にFaderの部分ですが,こちらは8本のFaderとその奥に8個のノブが存在します。
このノブはPANになったり,DynのThresholdになったりする便利なノブです。
Automation
デジタルミキサーの最大のメリットの一つに「状況を記憶させることができる」という機能がありますが,PRO2/PRO2Cももちろん可能です。AUTOMATION という名称です。
YAMAHAは"SCENE MRMORY"と呼ばれている機能です。ちょっとど忘れしましたがSNAP SHOTと読んでいるメーカーもあったと思います。
YAMAHAではSCENEの他にEQやDYNにLibraryと呼ばれるものがありますがPRO2/PRO2Cではその発想はありません。その代わりに"CHANNELのコピー/ペースト"という機能があります。
(追記)Libraryという記憶形式が用意されています。
「EQはコピー/ペーストしたいけどDYNは現在の設定にしたい。」などという時には前述の"channel safes"の機能を使用します。
PROシリーズのAUTOMATIONはいくつかのファイル形式があります。一番大きなくくりが"SHOW"と呼ばれるファイル形式でまずこれを用意して,その中に"SCENE"や"LIBRARY"を保存していく,というスタイルになります。
これらは必要に応じてUSBメモリーなどを利用して保存,バックアップが可能です。
またIntel Mac OS10.6以降のみの対応となりますがOFFLINE EDITORなるものも用意されています。
こちらはPROシリーズの画面が立ち上がり,ひと通りの作業を行うことが可能です。
各チャンネルのネーミング,VCAへのアサイン,POPの作成,カラーリングの変更,パッチングなど,いわゆる「仕込み」の部分が行えるのが嬉しい限りです。これをUSBメモリー経由で本体に移せばすぐに想定した今ソウルの出来上がりです。
また,2012年4月にはiPad用のApp,"MixTender"もリリースされています。
デジタルミキサー用の多くのiPad appがコンソールと1対1対応なのに対し,MixTenderは複数のアクセスが可能です。
リハの時などにメンバーさんにiPadを1人1枚渡してRecの時のCueBoxの用な感じでモニターを作ってもらうことも可能でしょう。
Afterwords
さて,結構な文章量を書いてきました。続きは次回にしたいと思います。
実際の操作感を試してみたい方は2012/5/1-5/6まで展示を行ないますのでお気軽にご来店ください(5/3,6は店頭以外のところで使用しております)。
date:
checker:Takumi Otani
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