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Dave Smith Instruments
Prophet'08

今回のProduct Reviewは珍しく(?)楽器です。しかもAnalog Synthesizerです。わくわくしますねー

Product Overview of Prophet'08

今回幸運にもProphet'08を試奏する機会を得たのは友人がBassistなのに(?)「アナログシンセが欲しい!」と言い出し、当店でお買い上げいただきました。
それで「一緒に試そうぜ」といわれて二つ返事で了承。21世紀によみがえった名機Prophetを心行くまで堪能する機会を得た訳です。

詳細は代理店ページに譲りますが、基本的なところだけ記載しておきましょう。まずProphet'08は8ボイス・アナログシンセサイザーです。ポリチェインで16ボイスにまで拡張可能です。鍵盤は61鍵盤セミウエイテッドで、ベロシティ及びアフタータッチに対応、スプリットモードでは2つのゾーンに分割可能です。

1ボイスにつきアナログ・オシレーター(デジタル制御)×2で,波形:ノコギリ波/三角波/ノコギリ+三角波/パルス波(パルスウイズ変調可能)を搭載、オシレーター別に独立した2モードのグライド(ポルタメント)などなど、さすがという感じでしょうか。

Dave Smith氏についても簡単に触れておきましょう。
シンセサイザー・デザイナーであり、Robert Moog博士と並ぶシンセ開発界の最重要人物です。自身の会社Sequential Circuits Inc.社(SCI)を設立し1977年、世界に先駆けて全てのパラメーター値をコンピューターによってメモリーできるポリフォニックシンセサイザーProphet-5を発表しました。その後1982年に設定された世界統一規格であるMIDIの開発に大きな貢献を果たし、以降シーケンサー内蔵マルチティンバーシンセSixTrak、デジタルサンプラーProphet2000/2002、ベクトルシンセサイザーProphet-VS等々斬新な製品を世に送り出します。80年代後半にはYamaha SY22、Korg WavestationといったProphet-VSの流れを汲むベクトルシンセシスの開発に携わり、その後もソフトシンセという概念すら一般的でなかった1990年代前半にSeer Systems Realityというソフトシンセを開発し、アナログ回路からデジタル回路、コンピューターソフトウェアまで幅広い分野に精通し、常に時代を先取りした製品を世に送り出してきました。シンセサイザーの歴史に多大な影響を与え続けるエンジニアです。

Prophet'08開発は驚くほどあっけなかったとのこと、設計はもちろん大変だったのでしょうが、試作機を作るときにはInternetを使ってパーツを発注し、POLY EVOLVERのシャーシに組み込んでいって完成したとの事です。昔みたいにオシレーターにらめっこすることはなかったとか。
便利な時代になったものだとインタビューでおっしゃっておいででした。

Sound Impression

さて、では実際の音に移っていきましょう。モノが楽器なので「好み」というのがかなり反映されています。予めご了承ください。

僕はシンセを試すときに基本的にピアノを音を試してみることにしています。ほぼ間違いなく搭載されていますし、ピアノの音がしっかりしているシンセはやはり他の音色も存在感が有り、オケに埋もれることはありません。
ところがこれが通用するのはデジタルシンセのみであり、アナログシンセでは不可能です。なので(?)とりあえずプリセットを1→128まで試してみました。
その感想の前に、まず音を出してみての第一印象を。

音太すぎ

という感じです。大して音量を上げているわけでもないのにみぞおちに響く低域というか部屋がゆれている感じが出ます。また音量を上げてみてもあまり耳に痛い痛いがしません(もちろん音色に依存しますが)。
KORG MR-2000Sのところにもチョコッと書きましたが、デジタル特有の高域のギスギス感がありません(アナログシンセなので当たり前ですけど)。オーケストラを聴いているような感じというか、迫力,音圧はあるのに耳に優しい感じがします。

では僕のオススメというか、好みの音です(苦笑)。

Prophet'08お持ちの方がいましたら是非、上記の音色を試してみてください。

58.HelicoptersとかResonanceを一杯にあげてFilterをいじるとやばいことになります。オクターブも下げてみてください。再生装置にも依りますが体をゆする低域が体感できます。

56.Toto French Hornは反則ですね。"Africa"(「TOTO IV」に収録)弾いちゃいましたよ。

そんなことをやっているうちに持ち主と「アナログシンセつかったロックの名曲、イントロの音作ろうぜ」という方向に
やはりここはVan Halenの"Jump"ではないかと思い早速いじってみます。ちなみに完全な個人的意見では、あのイントロで重要なのは右手のコードワークももちろんですが、左手で押さえるCの分厚い"ブミョー"と言う音ではないかと思います。
Saw Wave を選んでdetuneをかけて、いろいろやっている間にできましたよ。ブミョーが。

そこで次なるお題(?)が出されました。GODIEGOの"Monkey Magic"です。
確かにシンセを軸にした名曲ですね。ですがちゃんとコピーしたことがないので弾けません(汗)。
あの鋭く、存在感のあるある音はなんとかなるとして、やはり、あのフレーズあってのあの音です。
「あー、あれ一人じゃねー。できないんだよねー」(←言い訳全開)
「ストリングス系のフレーズがさぁー」(←完全に逃げ)
ドラえもんのイントロなどを早弾きしてお茶を濁してしまいました(苦笑)。

基本的な機能はやはりアナログシンセですからツマミを回していろいろやっていきます。デジタルと異なり1つのツマミが1つの機能、いわゆる1knob has 1 function.ですからツマミの役割が分からなくても回していけばなんとなくその機能は分かってきます。
もちろんデジタルに比べると出来ることは少ないのかもしれませんが、直感的にツマミを回して音を変える、というシンセの原点に立ち返ることが出来ます。

またヴィンテージと異なり新設計ですから安定性も抜群です。持ち主が買って帰って早速自宅で数時間、ヘッドフォンをつけてニヤニヤしながら(←本人談)いじっていたそうですが、発熱もなく非常に安定しているという印象を受けたとのことでした。

Afterwords

持ち主が言っていたのですが、
「ここまで音に存在感があると、下手にアンサンブルに混ぜるとほかのメンバーがいやな顔しそうだな(笑)」
確かにそのとおりです。
たかがシンセ、と高をくくってかかるとかなり痛い目を見ます。8ポリですから普通に音も途切れます。

そうそう、Prophetの音の太さを実感した好例があります。
デジタルシンセを弾くときにはよく左手のBassパートをオクターブで押さえていたのですが今回演奏中にそれをやると低域の塊が出てきて大変なことになりました。
8ポリですから右手のために使える音数を残しておく意味でも左手は単音で十分ではないかと思います。

かなりじゃじゃ馬でデジタルシンセの常識が通じない部分は多々あるのですが、それを手懐けていく楽しさみたいなものが存在するのもまた事実でしょう。

融通は利きづらいですがこれでしか出ない音をしっかり持っている楽器の一つです。

クリックで販売ページにジャンプ、別ウィンドウが開きます。

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Product Review