Antelope Audio
MP8d

今回見ていくのはAntelope Audioの新製品,8chHA+ADコンバーター MP8dです。新製品にもかかわらず,デモ機をチェックする機会に恵まれました(AAJのE藤さん,ありがとうございます!!)。

弊社スタジオには同社Wordclock Generator OCXが導入されていますし,WC以外にもコンバータやHAなどデジタル分野以外の分野でも高く評価されている同社製品。昨年末に発売されたPure 2は予約をいただくほどの人気でした。

そんなAntelopeの新製品 MP8d さっそく見ていきましょう。

About Antelope Audio

まず簡単にですがAntelope Audio社に関して説明しておきます。

同社はWCGの先駆,AArdSyncの開発者 イーゴア・レービン氏によって設立された会社です。現在,「第4世代」と氏がおっしゃるAntelopeの(=レービン氏の)Clocking技術はアナログオーディオの特性を犠牲にすることなく、デジタルオーディオの持つパワーをフルに活用することができる製品群を生み出しています。

Product Overview of MP8d

さて,では今回対象の製品MP8dです。

前述のとおり本機は8chHAに高品位ADコンバーターを搭載した製品です。もちろんアナログLine outputも持ち合わせています。

Specです。

入力

アナログ入力
Hi-Z入力(TRS端子) x 2
MIC/LINE入力(XLRコンボジャック) x 8
TRS入力(インプット1・2) x 2
デジタル入力
MADIファイバーオプティカル入力 x 1
ワードクロック
10Mアトミッククロック入力 x 1 @75Ω 3Vpp(BNC端子) 44.1 – 192kHz
ワードクロック入力 x 1 @75Ω 3Vpp(BNC端子) 44.1 – 192kHz
ワードクロック出力 x 2 @75Ω 3Vpp(BNC端子) 44.1 – 192kHz / 矩形波

出力

アナログ出力
ライン x 8 (DB25端子)出力 (8チャンネル)
ステレオヘッドフォン出力TRS端子)
デジタル出力

MADIファイバーオプティカル出力 x 1

S/PDIF出力 x 1
ADAT出力 x 2
AES/EBU (DB9端子) 出力 x 4
TOSLINK 出力 x 1
USB I/O
高速USB2.0 / Type-B端子

出力可能なDigital FormatはAES/EBU,ADI,S/P DIF(opt/ooax),MADIとコンシューマー規格から業務規格までキッチリ対応しています。ここまでのフォーマットに対応しますのでスプリッターとして使用して複数のバックアップレコーダーに信号を送ることが可能です。

届いたデモ機を開けてみると程よい重量感があります。

さっそくMP8d Launcherをインストールしセットアップです。接続して電源を投入すると本体Firmupのお知らせが出てきます。Bug FixなどかもしれないのでUpdateします。
待つこと数分,Firmup完了です。
ちなみにupdate中はフロントのインジケーターが左から右に光り,何かやってるんだろうなぁ,という感じを醸しだしてくれます。

外観ですが,Frontは左から Hi-Z input用のPhoneジャックが2個,そして大きく目を引くのは8個並んだGain Control knob(ロータリーエンコーダー,1dB step)くらいでしょうか。写真通りシンプルです。
このエンコーダーはプッシュ式になっており,押すことでソースを切り替えます。ch1,2はMic,Line,Hi-Zを,ch3-8はMic,Lineをソフトを使用することなく変更可能です。個人的には+48VのOn/OFFのほうがありがたいのですがひょっとしたら将来的にFirmで設定可能になるかもしれません。ノブ上部のIndicatorはLevelを表します。

右にはヘッドフォンジャックとVol knob(正確にはHeadphone Volumeをコントロールするロータリーエンコーダー)が搭載されています。これらのGain設定は後述のPC/Macのソフトから設定/監視/設定保存することも可能です。

Rear Panelはコンボコネクターが8機と既述のDigital コネクターが並んでいます。XLRがマイク入力,1/4"TRSはLINEに使用する形になります。電源コネクターはIEC C14,電源はUniversalです。

MP8d ソフトウェア "MP8d Launcher"

先ほど触れたMP8dをコントロールするソフト,MP8d Launcherを見ていきましょう。

詳細は取扱説明書に譲りますがMP8d Launcherからはハードウェア上のすべての操作/監視が可能です。USB接続してMP8d Launcherを立ち上げると上部には8基のHAの状態が確認できます。増幅率はMic:+5-+dB,Line:dBです。

HAの機能として+48V,Phaseが挙げられますがその監視,切り替えもこのソフトで可能ですし,HPFを搭載しており,そのCut Off Fsもここで設定可能です。

本体フロントのノブはすべてコントロールノブで実際には信号は流れていません。

MP8d Launcherの構成を簡単に紹介します。4つのタブから構成されています。HAの状況はどのタブに移っても表示されています。

Routing

信号のRoutingもこのソフトで行います。
例えばですが,S/P DIFは2chしか出力できませんがCoaxにHA out3/6,Optに4/8を割り当てることも可能です。Routingの設定も保存/呼び出しが可能です。
Routingの際迷いづらくするために,HA out=青,MADI in=水色, AFX out=緑,MixL/R=オレンジと色付けがされています。マウスでドラッグしてアサインするのですが,Shift keyを併用すれば複数を一気にアサイン可能です。

Meter

上部HAの増幅率の横にもHA8基分のmeterはありますが,こちらは32ch分表示可能です。

Meter SourceはHA x8,MADI-in A(1-32)/B(33-64),MADI-out A(1-32)/B(33-64)などが選択可能です。

Effect

また,MP8dは内部にDSPを搭載しており,32入力のミキサー機能,AFXと呼ばれるchannel Strip機能 x8を持っています。
更にROUTING画面でその出力を好みのOutputにアサイン可能ですので,
MADI outputの1-8にMP8dのDirect Line outputを,9-16chに1-8のAFX outを,17-18にch1-8の2Mix outをアサインする,ということも可能です。
また,AFXのInput/OutputにそれぞれMADIをアサインすることにより,8chの外部DSPプラグイン的な使用方法が可能です。
AFXのEQは3バンドFull-Parametric EQ+Lo/Hiバンドが Filter/Shelving切り替えです。DynはPeak/RMS切り替え可能なCompressorです。EQとコンプの順番を入れ換えることも可能ですしStereoLink(1/2,3/4,5/6,7/8)させて使用することも可能です。ただ,AFXがStLink可能ならHAもST Link可能,もしくは,Groupが組めると嬉しいですね。MP8dはDigital Control可能なのでこの辺もFirmで更新されていくかもしれません。

Mixer

MixerのPresetも1-5まで保存できるのでRec用のMonitor Mixをここで作ってしまえばPC側のLatencyも気にせずにすみますし,AFXを使用して基本的な音作りをMP8dで行ってしまう,ということも可能です。

また,ミキサーの入力はAssignableですのでMP8dの入力以外,すなわちMADIのInputをアサインすることも可能です。
MixerInputとしてch1-8=MP8d,ch30にClick(DAW),ch31-32=DAW Master,とアサインすれば充分録音のモニターとして充分使用可能です。

Sound Impression of MP8d

Install in Annex Rec

さて,弊社スタジオAnnex RecにはSolid State Logic (SSL) Alpha-Link MXが導入されており,DAWがインストールされたMacとMADIで信号のやり取りしています。
今回MP8dに興味がわいたのはAntelopeが発表した8ch HAということに加えてMADIの入出力を持っている,ということが挙げられます。
48kHz作動時には64ch(MADI-X),96kHz作動時でも32chの同時入出力が可能ですのでMADI optが1本あれば簡単に弊社のシステムの同時録音数を増やすことが可能なのです。

前述のとおりSpliterとしても機能しますので今回はDB25 Line outuptをAlpha-Link MXに入力し,更にMP8dのをMADIのSignal chainに加え,8ch x2の同時録音を行ってみました(DAWのch1とch9に,ch2とch10に,...ch nとch n+8に同じ楽器の信号が入力される状態です)。ADの回路の性能なども垣間見れることでしょう。

マイクの信号をYパラで分岐し同じ長さのケーブルでMP8dと弊社SSL XLogic Channelに入力しました。ADCはSSL Alpha Link,W/CはAntelope OCXです。当たり前ですが増幅率を同じにすれば同じmeterの振れ方をします。

左右にパンを振ってみましたが流石にセンター定位はしませんが,明らかにどちらかが劣っている,という印象は皆無です。価格差を考えれば充分なクオリティだと思います。

あとWCをOCXから供給するのか,MP8dから供給するのかをPlaybackの際に切り替えてみました。Soloを切り替える,という訳にはいかないので幾分主観も入っていると思いますが,MP8dのほうが音像が大きく感じられる印象です。大げさな表現をすると音像がモニタースピーカーの前に出てくる,という感じでしょうか。

厳密な比較ではありませんが3回ほどクロックを入れ替えて視聴したのですべてが勘違い,ということもないと思います。

As Extentional HAs

シンプルな8chHA+ADAT A/Dコンバータとして機能するよう設定してLiveの拡張HAとして使用してみました。いつもはXL48を使用しているのですが今回はお留守番,いやベンチです。

瞬時に操作しないと行けない時には,やはり全てがフィジカルコントロール可能なXL48のほうがSRの現場には向いていると思いますが,今回リハもできますし一応上記コントロールソフトをインストールしたPCも持ち込みました。

とは言え,こちらの都合でAFXでのんびり音を作るわけには行きませんので今回はHA+ADコンバーターというシンプルな使い方にしました。EQやDynはコンソール側で行うつもりでした。一様に監視できるので楽かなと。

現場レポートではないのでMP8d以外の部分は割愛しますが,結果的にはAFXの機能も少し使いつつ,音を作っていった,という感じです。やはりPC持って行ってよかったです。

W/Cは48kに設定し接続は前述のとおり,ADAT Opticalで行いました。特に難なくSyncし,スタンバイ完了です。

AFXを使ったのは,やはり別のキャラクターのコンプが欲しくなった,ということに尽きます。最初はすべてコンソール側で操作していたのですが,欲しかった音がミキサー内臓のコンプではちょっと作りづらい感じの音だったのでダメ元でAFXを使用しました。結果的にはほしい感じのニュアンスが得られ言うことなしです。Digital Mixerは非常に便利なのですが,組み合わせの自由度は極端に減ります。DAWの様にPlug-inの様に自在に組めればよいのですが,そうも行きません。今回の様に別のメーカーのコンプが扱える,と言うのは大きなメリットだと思いますし,コンプの2段がけ,みたいな処理も可能です。もちろんMP8dで苦手なコンプレッションというものも存在するでしょうが,その時はまた考えれば良いと思います。

HAの音質の印象ですが,変な癖はなく,使いやすい印象です。にじみのない良い音です。DAW全盛の時代に対応したHAというか,HAのキャラが少ないという印象でワイドレンジでしなやかです。今回MP8dを通したのはDs(Kick,Sn,O/H),Bass(Line),Pf,Vocalだったのですが,全般的にしなやかでくっきりした音の印象です。WCも音質に影響しますからその部分もあると思いますが,Faderを上げた時の反応がシビアというか,細かいFader操作にきちんと反応してくれる印象です。大味感は一切ありません。


操作面からははやりRecのほうが向いているかな,と感じましたがHAのRecallが可能ということを考えればDigitalMixerがここまで浸透したSRの現場でも積極的に使っていけそうな気がします。何より音だ良いです。
特に多チャンネルを使用するツアーだとリハ時間の短縮にもつながるので便利かと思います。

MP32の様にPC/MacのみでFull-Controlという訳でもありませんし録音だとHAを使い分けて音のキャラクターを分ける,ということは当たり前ですのでそういった意味でも優秀なHAにDigital outputが搭載されて発売されるのはマイナスにはなりません。

Afterwords

DSPの搭載などHA以外の部分にも目が行きがちですが,優秀なクロックを搭載したクリアな音質のHAです。ReferenceになりうるHAの一つだと思います。Digital Domainではありますが8chのChannel Stripのような使い方ができる優秀なHAです。

インターフェイスからの拡張をお考えの方ぜひとも候補にいれてみてください。

Antelope Audio,MP8d 画像

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checker:Takumi Otani

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