dbx
676

今回見ていくのはdbxのchannel strip 676です。dbxのアウトボードといえばダイナミクスを筆頭に10シリーズ,ハイエンド機のBlueシリーズ,Purpleシリーズ,回路に真空管を採用したSilverシリーズあたりが思い浮かびます。かつてはVPR allianceのような900シリーズ,というモジュールもありました。

今回新製品ということでヒビノ I藤さんからデモ機を借りて試してみました。

さっそく見て行きましょう

Product Overview of 676

本体は2Uで黒色の精悍な面構えです。ノブのサイズはBlueシリーズ,Purpleシリーズと同様で大きく,コントロールしやすそうです。ノブポット自体は違うのか回した時の重さはあまりなくくるくる回る感じです。センターには小さいながらもVUメーターが配置されINPUT,OPUTPUT,G/Rの切り替えが可能です。

Tube Microphone Preamp Channel Stripとのことで,HA段に真空管12AU7A / ECC82が採用され250VDCで駆動されているとのこと。

フロントパネルの構成は左からHAセクション,EQセクション(3バンドミッドスイープ),Dynセクションとなっています。

通常のチャンネルストリップでは見慣れないノブがあります。[POST TUBE ATTENUATION]です。

初めて見た時に「?」となったのですが「POST TUBE ATTENUATION」(以下「PTA」)をそのまま解釈して「ああ,なるほど」となりました。ギターアンプなどのGainとVolumeの関係に近いと解釈して頂いて良いと思います。

PTAを0dB(=減衰なし)にして,HA Gainを設定すると比較的クリーンな,ソリッドステート回路主体の音の印象です。GAINをある程度あげて,その分PTAで抑えこんでやると真空管のらしさが出てきます。

PTAはありそうでなかったノブでその後にEQ回路,Dyn回路に負荷をかけることなく+4dBu当たりで出力できるナイスなつまみです。ほしい質感にあわせて美味しいところを引き出せる感じが好印象です。Peak IndicatorがHAとOutputにそれぞれ装備され,レベルを監視してくれます。

EQセクションは3バンド LF=100Hz,HF=10kHz,Midスイープ(100-8k Hz),QがNarrow(Q=2.9)/Normal(Q=0.9)で切り替え可能です。

Dynセクション,というよりはComp/Limtrerセクションです。さすがに160を筆頭に多くのコンプの銘器を排出してきたブランドだけのことはあります。「取り敢えずThresholdとRatioあります」ではなく,Attack,Release,OverEasy(SoftKnee)もコントロール可能です。効きのほどは意外としなやかです。1066などと言うよりは160SLや162SLに近いです。あえて言うなら162SLのほうが近いかもしれません。レスポンスはあまり早い印象ではありませんが決して遅いわけではありません。「スパーン」とか「カツーン」というよりは「ターン」くらいの印象です(よくわからなければスルーしてください)。

用途としてはスタジオ向け機材とのことですが,PAの現場に持ち出すのもありでしょう。またOptionでADコンバーターが搭載できるようになっています。

リアパネルはMic Input, InsertI/O(Unb),Line Output,Sidechain I/O,Line Outputが並んでいます。HA Outがあるのは嬉しいですね。Post EQで出力されます。

DynのStereo Linkが欲しかったですが,Sidechainを使用すれば可能なのかもしれません。今回は1台だけだったので未検証です。Balanced phoneの位相反転ケーブルがあればできそうな気もします。

欲を言えばDynとEQの順番を入れ換えるボタン欲しかったですね。

Sound Impression of 676

さて,今回どさくさに紛れて2日間のPAの現場の2日目で試してみました。取り敢えずKickの回路に使用しました。

どの程度TubeをDriveさせるか悩んだのですが,無難なところにしました。イメージとしてはTube:SlidState=1:1くらいでバンドに合わせて多少その比率を変えていった,という感じです。

ConsoleのInsert RTNに戻せればよかったのですが,UnbalancedになるのでLine inputに入力しました。

当たり前ですが,HAが異なるので昨日をKickの印象が変わります。dbxのもっちりした感じが付加される感じと言うんでしょうか。

良い感じだったのでそのまま使用することにしました。リハの段階になり,再度Gainを調整しDynでかる~く叩いてやってOKです。

Percussiveな楽器の時にはOutputにPeak Meterあるといいな,と思いましたが別にConsoleのSoloボタンを使えばいいだけです。

別のタイミングでRecがあったので今度はBassです。Inst inに入れ,他のDI inをもつものと比較しBassistの好みを反映させつつ絞っていきました。曲調や好みもちろんあるのでしょうが今回は最終的に676に決定です。強く弾いた時にHAのPeakが光るくらいにして真空管らしさを引き出し,PTAが15dBほど,CompressionはGR=3-5dBくらいに調整しました。Control RoomでLine録音だったのですがBassistが何回もパネルをみて「こういう音Liveでも出したいなぁ」とぼそっとつぶやいていました。


真空管HAということで気になるのがSilver Series 586の違いです。信号をパラって,という厳密なチェックではないのであくまで印象ベースですが,676のほうがまとまりのある扱いやすい音,という印象です。開発された時代,開発コンセプトも異なるでしょうから仕方ありません。586はProToolsなどのDAWが台頭し始めた1990年代後半に「真空管のあたたかみを付加する」という目的で開発されています。

676の開発コンセプトは正確にはわかりませんが,Interface搭載のHA以外にアナログ段で音をそれなりに作り込めるToolとして開発されているのではないかと思います。

ちょうどお客さんと話す機会があってちょっと試してもらったのですが,I/Fのサラっとした感じとは全く別の中域のパンチが非常に気に入ったと言っていました

その時はHAを少しブーストしPTAで少しATTをかけ,コンプでピークを叩く感じで設定しました。流石にdbx,しっかりかかります。彼は声を張った時の真空管とCompの中域の感じが非常に気に入ったようです。

ガッツの有る感じのVocalを録音したいときには真空管の飽和感とCompressionを,しなやかに上品な音を録音したい時には真空管のDriveを控えめににてCompressionも浅めにする,といった感じでバリエーションの多い,音作りが可能な印象です。

Afterwords

いつもSSLやFocusrite,AmekのChannel Stripを使用しているとパラメーターに物足りなさを感じますが,価格帯が根本的に違いますし,おそらくターゲットも違うのでしょう。

真空管とPTAそしてコンプレッサーの組み合わせで結構幅広いニュアンスが出せると思います。

dbxということもありどっしりした音に有効かな,と思っていたのですが,A Gtなどにも有効です。

価格も「超高級機」と言うわけではありません。真空管を交換して音をチューニングしたりも可能でしょう。

気になる方はお気軽にお問合せください。

dbx,676 画像

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