beyerdynamic
TG D70

さて、今回見ていくのはbeyerdynamicのダイナミックマイクです。AKGであればD112かD12 VR、SHUREであればBETA52, audio-technicaであればATM25, SENNHEISERであればe602 II,e902と同様の位置づけでしょうか。いわゆるバスドラム用マイクです。

早速見ていきましょう。

Product Overview of TG D70

まずはSpecです。

Spec of TG D70

Transducer typ
Dynamic
Operating principle
Pressure gradient
Polar pattern
Hypercardioid
Close miking
20 ... 14,100 Hz
Distant miking (measured at 1 m)
40 ... 14,100 Hz
Open circuit voltage
2.2 mV/Pa (-53.1 dBV) ±2.5 dB
Nominal impedance
280 Ω
Load impedance
≥ 1 kΩ
Connection
XLR, 3-pin, male
Length
91 mm
Head diameter
57 mm
Weight
341 g

比較の意味でも先程列挙したKick用マイクのSpecを一部も表形式にて記載します。

Model指向性開回路感度[dBV/Pa]周波数特性[Hz]Max SPL [dB SPL]Output Impedance[Ω]重量[g]周波数特性曲線
クリックで100%サイズが開きます。
beyerdynamic TG D70Hypercardioid-53.120 ... 14,100 155 280341 beyerdynamic TG D70周波数特性曲線
AKG D112mkIICardioid-5520 ... 17,000 160 210484AKG D112 mkII周波数特性曲線
AKG D12 VRCardioid-5817 ... 17,000 164 200500 AKG D12 VR周波数特性曲線
SHURE Beta52Supercardioid-64 20 … 10,000 174 150605 SHURE Beta52周波数特性曲線
audio-technica ATM25Hypercardioid-5430 … 15,000 145 600390audio-technica ATM25周波数特性曲線
SENNHEISER e602 IICardioid-55 20 … 18,000 155 350320 SENNHEISER e602 II周波数特性曲線
SENNHEISER e902Cardioid-52 20 … 18,000 155 350440 SENNHEISER e902周波数特性曲線

Kick用のマイクは各社色々個性が出そうです。比較した中では比較的軽量のコンパクトなマイクと言って良いでしょう。

周波数特性曲線を見ると、低域にいくつ連れ感度が低下している印象ですが、近接効果が大きく1mと2cmで50Hzの感度は20dBほど違います。SHURE BETA 52の近接効果もなかなかですがそれ以上です。

指向性はHypercardioidとありますが、Diagramを見るともう少しFig-8の成分が強いように感じます。その分、近接効果が大きく出ているのでしょう。

Sound Impression of TG D70

実際に録音して使用してみました。もちろん対象はKick drumです。お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、ここ最近のレビューにbeyerdynamicが多いのですが、マイクをお借りできたのでDsを録音して色々試してみた、という状況です。ですのでTG D70だけのチェックというよりはDs録音においてTG D70がどれに使えるか、という観点で試しています。マイクの音質の試聴なので基本的にNo EQ/No Dynでの録音/試聴です。

今回はいわゆるKickの内部に配置し、アタックを拾うイメージでの使用です。

近接効果の観点からもある程度Batter headに近いほうが良い印象です。

Floor tomに使用してみました。

これは良いです!!その場にいた全員が、「おー!!」と声を上げました。

RockなFloor Tomのサウンドが得られます。HAでGainを適正に取っただけでこのサウンドになるのはありがたいですね!!

D112やe602,ATM25などをtomに使用することは録音では少なくありませんし、僕もSRでもATM25をFloor tomに使用したことがあります。

今となっては少数かもしれませんが、SENNEISER MD421がKickの収録に使われている写真を見たことがある人も少なくないのではないかと思います。

冷静に考えればBass DrumとTom/Floor tomは筒状のDrum shellの両端にHeadを張る、という共通の構造していますから同じマイクが使えても疑問はありません。

あとは取り回しの問題でしょうか。Kickに対してTom周りはCymbalなどが近くにあることが多いのでマイクの筐体が大きいとなかなかマイキングが困難になる場合があります。その意味だとTG D70はタム周りはかさばるもしれませんが音はピカイチです。

後日LiveのOpeの際に現場に持ち込んで試してみました。Drummerは長谷川浩二さんです。浩二さんといえば26インチのKick drumから繰り出されるパワフルなサウンドがトレードマークです。いつもは会場の備品のAKG D112を使用するのですが今回TG D70でどこまでキャプチャーできるかトライです。

アタックを中心に拾うべく、batter head寄りに配置し、Front Headの外側にCondenser Micを設置、Delayで位相を合わせた形です。

リハに移り、さーとBalanceを取っていきましたがKickのBottomの量感が素晴らしい! Soloで確認するとTG D70は狙い通りアタックを中心に拾っていますがFront Headに配置したコンデンサーマイクとのつながりが良いように感じました。

別のオペのタイミングで今度はFornt Head寄りに配置してみました。当たり前ですがアタックはおとなしくなり、サウンドの中核は低域にシフトします。

今回はconsole側でdouble patchにして、アタックを強調した回線と低域の量感を充実させた回線とのバランスを変更する形でFader controlのみである程度Kick soundを変更できるようにしましたが、その目論見は成功でした。特に後者の回線はほとんどEQをかけずとも充分に目的を果たすことが出来ました。

Afterwords

非常に好印象なKick/Tom用マイクと言えます。いつものマイクでEQで、というのも嫌いではありませんが、用途に合わせて入り口を変える、というアプローチも非常に好ましいかと思います。そもそもマイクアレンジ、とはそういうものですし。

バリエーションを広げたい方などにぜひともおすすめできるマイクです。

beyerdynamic,TG D70 画像

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