beyerdynamic
M 90 PRO X

さて、今回もbeyerdynamicのマイクです。M 90 PRO Xを見ていきたいと思います。

同シリーズで見た目もそっくりな製品にM 70 PRO Xというダイナミックマイクがありますが、こちらはそのルックスらしく(?)サイドアドレスコンデンサーマイクです。

今回も、MAJ/ABのK田さん、ありがとうございます。

Product Overview of M 90 PRO X

届いたデモ機は販売用の箱に入っており、そこまで重たい印象はありません。

箱を開けてみると、巾着袋の様なBagに入ったM 90 PRO Xとエラスティックサスペンションマウントが並んでおり、その下にポップガードも付属します。なかなか親切なセット内容という印象です。

まずはSpecから参りましょうか。

Transducer type
Condenser
Operating principle
Pressure gradient
Frequency response
20 ... 20,000 Hz
Polar pattern
Cardioid
Open circuit voltage at 1 kHz (0 dB = 1 V/Pa)
36.3 mV/Pa = -28.8 dBV/Pa ±2 dB
Nominal impedance
< 180 Ω
Load impedance
≥ 1,000 Ω
Max. sound pressure level (at 1 kHz)
133 dB
Signal-to-noise ratio (rel. to 1 Pa)
88.4 dBA
Equivalent sound pressure level (A-weighted)
5.6 dB
Power supply
20 ... 52 V (Phantom)
Power consumption
< 6.2 mA
Connection
XLR, 3-pin, male
Length
197 mm
Diameter
52 mm
Weight
296 g
Frequency response curve
M 90 PRO X 周波数特性曲線

周波数特性に注目すると高域にPeakがあります。所謂楽器の倍音の帯域ですので明るい音が録れそうな気がします。また、感度が -28.8 dBV/Paと比較的高く、ノイズレベルが5.6 dBと低いのも特徴でしょうか。AKG C414の感度とノイズレベルはそれぞれ、-33dB re 1V/Pa, 6dB SPLですから非常に優秀と言って良いでしょう。

最大音圧は133 dB SPLなのでDsや大音量の楽器用アンプへのClose mikingはおすすめできません。サイズの割に軽量ですのでその意味でも扱いやすいと思いますし、デスクアームスタンドなどにマウントすることも想定されているのでしょう。

感度が高く、等価騒音レベル(A-weighted Equivalent sound pressure level)が低いので声を中心に弱音楽器にも広く使っていけそうです。

指向性は単一指向性ですので近接効果は注意が必要です。音源から1mの場所で少し減衰傾向にある低域も2cmの距離ですと50Hzが8dBほど上昇しますのでVocalなど、比較的On-mikingになる場合にはHPFを併用する必要があるでしょう。

Sound Impression of M 90 PRO X

For Pf in live concert

高感度、低ノイズということでPfに使用してみました。

ピアノは構造的にもワイドレンジな楽器なので複数本のマイクを使用することが多いですが、今回はM 90 PRO XはPfのBottomに配置してみました。このマイクポジションは僕のお気に入りの場所で、Pfの収録時に回線に余裕があれば必ずこの場所にマイクを配置します。

今回の演奏はPf+Vocalという内容で、Pfに使用したMicは合計4本、HammerあたりのNOS方式に近い配置で、Pf Topに1本、そしてPf BottomにM 90 PRO Xという布陣です。

リハ中にそれぞれのFaderを上げ下げしてそれぞれの役割を確認しましたが、

Hammer
主にアタックを中心としたサウンド
Pf Top
主にサステインを中心としたサウンド。ボディ感の要素
Pf bottom(=M 90 PRO X)
ボディ感の充実、特に低域のボディ感

という印象です。

どれがメインマイクという訳でもなく、そしてどれが欠けても物足りなくなる印象でした。

どれも同じFader positionになるようにGainなどを微調整し、Pf soloの時にはPf Topを少し上げて、balladでゆったりとした低域が欲しいときにはPf Bottomを少し上げる、というEQに近いコントロールが可能でした。ただ大きく違うのはEQによる変化ではないということです。

リハ後に、設営から立ち会ってくれた調律師の方が「Pfの音が素晴らしい。低域弦の音がモヤつくことなくアタックのあるLowとして体感できる。ベーシストがいるのかと錯覚するほどたっだ!ピアノのサイズが一回り大きくなったかの様だ!」と嬉しいお言葉を頂きました。

For Ds in recording

さて、Dsの録音にも使用してみました。流石に各楽器のオンマイクはまずいと思いましたので、Room Micなどのオフマイキングでの試聴です。

Roomマイクとして使用したのですが、非常に好印象です。低域が太く収録できています。Faderを上げると部屋のサイズが一周り大きくなりDrumとCymbalの集合体Drum Kitという一つの楽器になる、という印象です。念のためですが、M 90 PRO Xの低域がブーストされているのではなく低域が溜まるポジションに配置したところ、それをきちんと収録できている、という状態です。

Afterwords

最初は価格の観点から、宅録向けのそこそこのマイクなのかなと思っていましたが、なかなかハイスペックなリクエストにも応えてくれる印象です。いやー、先入観て良くないですね。

もちろん、宅録ユーザーやWebcastユーザーがターゲットという側面も持っていると思いますが、かなり良いマイクだと思います。

今回声に対するテストができませんでしたが、おそそらく良い結果を叩き出してくれるでしょう。

前述の通り、PADはなく、最大音圧は133 dB SPLなのでDsや大音量の楽器用アンプなどへの使用は避けるべきかと思いますが、その他の用途であれば広く使っていけそうです。

ForbesのArticleにも紹介されています。

良いマイクをご検討中の方、ぜひとも選択肢に加えてみてください。

beyerdynamic,M 90 PRO X 画像

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