Mackie
DL1608

今回はMackieのデジタルミキサー DL1608です。iPadコントロールの話題の製品,その実力はどのようなものなのでしょうか。早速見ていきます。

Product Overview of DL1608

デジタルミキサーの中にはiPadをサポートしているものが多々あります。LS9やCL seriesがコントロール可能なYAMAHA StageMix,PROシリーズがコントロール可能なiPadアプリなどです。

これらの製品とDL1608が決定的に違うのはiPadが無いとなにもできないか,iPadが支援機能になっているかの違いです。

基本的なスペックです。

Sample Rate
48kHz
BitDepth
24Bit
Laytency
1.5mSec
周波数特性
20Hz -20kHz ±0,-1dB
最大入力レベル
XLR:+21dBu
1/4":+30dBu
最大出力
+21dBu
サイズ
291W x 391D x 95Hmm
重量
3.1kg(iPad含まず)

このあたりでしょうか。軽量でコンパクトな16chデジタルミキサーという感じです。

Control App [MasterFader]

前述の通りiPadでコントロールするわけで,そのためのアプリが無料公開されています。その名もMasterFader。DLが完了するとiPadの画面にアイコンが出てきます。起動させるとミキサー画面で起動します。DL1608のドックに装備すると[DL1608のdataをiPadに読み込ませるのか][iPadのdataをDL1608に読み込ませるのか][OFFLINEで起動するのか]を選び,iPadとDL1608を同期させます。

MasterFaderの最新版をDLしたのですが,DL1608もファームもそれに伴いULされます。非常によく考えられています。

チャンネル構成はアナログ入力16ch,Reverb(Stereo),Delay(Stereo),iPad(Stereo)です。4Band Full-parametricEQ+HPF,Gate,Compが標準装備(Reverb,DelayにはDynamicsはありません)です。

SHURE SM58をつないで声を出しつつ弄ってみたのですが,まず最初の印象は音が良い,というものです。ONYX HAのおかげでしょう。ノイズも少なく好印象です。

MixerWinは8ch+マスターの表示になり,スワイプによりターゲットチャンネルに移動します。メーターはPreFader表示です。

Channnel Stripの上部には上からEQ/DYNのEditのためのディスプレイがあり,下にMUTE,PAN,Fader,SOLO,最下部にはChannel Iconがあります。

さすがにドラテを貼っても意味がないのでChannel Nameは入力できるようになっているのですがIcomも変更可能です。更にiPadのカメラを使って出演者の顔写真を取り込むことも可能です。Mackieらしい遊び心ですね。

各チャンネルのEQ,Dynモードはチャンネルストリップ上部のEQ画面をタッチすることでアクセスできます。

EQ,DYNの効きもスムーズで好印象です。iPadならではの操作性と言えるのでしょう。DAWなどを浸かったことがある人はなんとなくわかっていただけると思いますが,ポイントをドラッグすればカット/ブーストが可能です。ピンチによりQもカーブを見ながら変更可能です。

もちろんパラメーターとしても用意されておりますのでそちらを変更することにより「Fsを変更しようと思ってカーブをいじったら図らずしてGainが変わってしまった」みたいなことが防げます。

DYNも同様で見慣れたカーブとInput/output GRメーターが用意されておりざっくりした設定を行うのが可能であると共にやはり見慣れたパラメーターThreshold,Ratio,Attack,Releaseなどが用意されていますので微調整も可能です。

EQとDYNの順番は入れ替えは不可能なようです。

EQ,DYN,REV,DLYを編集している場合でも左端には該当チャンネルのFaderとMeterが表示されていますのでFader操作は可能です。

各パラメーターは変更するとその値が画面上部中央に数値として表示されますし,数値入力も可能です。

出力バスはMAIN(Stereo)に加えAUXが6つ,内部バスとなりますが,前述のRev,DDLのセンドが各1つづつあります。

AUXは一括でPre/Postの切り替えが可能で,MAINとAUX1-6には31バンドGraphicEQ,Compが標準装備されています。

Sendの設定はMixerWindowで行ないます。スナップショットなどのモードを除いて画面の右には常にマスターメーターが表示されているのですが,そのさらに右に[L/R],[A1]-[A6],[REV][DLY]と表示がありその部分をタッチすることによりそのバスのセンド画面に変わります。デジタルミキサーのレイヤー切り替えと同じ発想です。

REVとDLYは各チャンネルにもSendのパラメーターが用意されています。REV/DLYの設定変更もここから行えます。

このMasterFaderアプリですが,非常によく考えられており,実際には取説を一切見ることなく進めてきました。後述になりますが実際のopeでも使用してみましたが,その現場でも「よくできているなぁ」と感心しました。

iPadとうこともあり,Wi-Fi環境下でリモート・コントロールが可能です。今回はDockに装備していわゆる昔ながらのミキサースタイルで使用しましたが,Liveの会場によってはStageにDL1608を設置しGainをとったあと客性に座ってOpe,ということも可能でしょう。

さすがに本番中ウロウロするのはコンサートのスタイルによっては歓迎されないと思いますが,リハ中に自在に動き回れるのは大きいですね。

Sound Impression of DL1608

さて,JazzのBigBandのOpeで実際に使用する機会を得ました。マイクの数はさほど多くありません。いつもはバンドさん所有のアナログミキサーMackie1642でopeをしていたのですがちょっと無理くりな部分もあり,InterBEEでみて「いいかもなぁ」と思って借りてみました(otk Iさん,Sさん,Nさんありがとうございます)。

回線的には

  1. O/H L
  2. O/H R
  3. Kick
  4. Bass(Line)
  5. A pf(L)
  6. A pf(R)
  7. D pf
  8. Gt
  9. Solo L
  10. Solo R
  11. Talkback

です。VocalさんとPercussionさんが急遽出演できなくなったとかで,コンパクトな回線になりました。

今回のシステムはMixerはもちろんDL1608,モニター3系統,という感じです。FoHのEQだけはいつも使用しているParametricEQを持ち込みました。

設置してみて思ったんのが「コンパクト!!」ということ。いつも使用しているMixerはRack幅ありますので450mm程でしょうか。DL1608はその2/3ほどです。Effectorも持ち込まなかったのでだいぶすっきりした感じです。

接続していわゆる「ワンツーチェック」を行うのですが,ONYX HAがいい仕事しています。いつもよりすっきりした,透明感のある音です。HAの違いもあってかFoHのチューニングはすんなり完了です。

リバーブを調整していきます。ホール系を選んでそれっぽい感じにしました。僕は長めのリバーブを薄く掛けることが多いのでですが,無理なく広がるリバーブです。ただ,音が暗めというか重めです。EQで明るくして使用しました。

さてGainCheckです。ちょうど出演者さんも準備が進んできたので進めていきます。GAINを取るときにはPrefaderが重要なわけですがさすがにiPadのディスプレイ,LEDのPFL表示より高精度です。

Kick,Bassにはうっすらcompをかけ,SoloMicなどはHPFを入れていきます。ストレスの無い操作で「アナログコンソールのようだ」とは行きませんが他社製品のデジタルミキサーより操作は早いですね。

Fader操作が一番心配だったのですが,ストレスなく操作できます。スワイプしないといけないのでChの構成は練っておいたほうがいいかもしれません。

リハが終わり状況保存です。Snapshotという名称で保存が可能です。Solo以外は全部覚えてくれます。

また今回は使用しませんでしたが,Presetなるものが用意されており,それらを使用することによりQuick Mixingも可能です。

エンジニアではない人が目的のバランスにたどり着くまでのアシストもしっかりですね。

Afterwords

Ope終了してふと思ったのがミスタッチによる誤作動がほとんどなかったこと,例えばですが,SoloボタンとMUTEボタンが上下に配置されていることにより「本番中にSOLOを聞こうと思ったらMUTEを押してしまって音が出なくなった」ということは防止されています。

画面上のボタンのサイズも無理なくちょうど良いサイズでした。ほとんど初めてに等しい状態で使用押した人間がストレスなく使用できるというのは当たり前のようでいて,開発側からするととても大変な作業だと思います。

何気なく,細かいことを気にせずに使用できるというのは大きなアドバンテージです。

FirmUpで改善すると思いますがさり気なくリクエストを記載しておきましょう。

まずChannnelをリンクさせてStereo Fader的アプローチで操作できると良いですね。前述のとおり画面には8Faderなのでうまくチャンネルを配置できれば同時にコントロール出来るチャンネルが増えることになります。

あとiPad ch,REV,DLY ch以外を一括MUTEできる機能があると嬉しいですね。

ちなみにMackieはこういった要望をWeb上で受け付けており、投票することにより、ご要望の高い順、必然性の高い順にアップデートを行っている最中とのこと。リクエストがある方は英文ですがぜひとも投票(VOTE)してみてください。投票ページ

16TrのMTRにして欲しい,というリクエストもありました。

あまり細かい機能はなくていいと思います。iPadコントロールの画期的製品,というところに話題が行きがちですが,音響機材として最重要な部分の一つ,「音が良い」という部分を伝えたいと思います。

チャンネル数の制限はありますが,ぜひとも選択肢に入れていただきたいミキサーです。

Mackie,DL1608 画像ミキサー画面EQ画面ダイナミクス画面Rev/DLY画面G EQ画面

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checker:Takumi Otani

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