KORG
MW-1608/MW-2408

お久しぶりの製品レビューです。新製品というわけではありませんが、ちょっと気になっていたミキサーのデモ機を借りることができた(K林さんありがとうございます!!)のでまとめてみました。

今回はKORGがReleaseしたSoundlink MWシリーズ MW-1608です。同シリーズにMW-2408がありますが、違うのはCh数だけです。

早速見ていきましょう。

Product Overview of MW-1608/MW-2408

Soundlink MWシリーズの2機種はLegendary Mixer DesignerのGreg Clark MackieとGreg Mackieが立ち上げたオーディオメーカー MACKIEにてMackie D8BやHDR-24そして、Mackie Controlなど、主にDigital関係の製品開発に携わったPeter Wattsとのデザインによって設計されました(もちろんsoftwareはKORGも開発に携わっています)。

Soundlink MWシリーズはHybrid Analog/Digital Mixerと銘打たれており、AnalogとDigitalのいいとこ取りの形になっています。

Digital Mixerのメリットといえば

Digital Mixerのデメリットといえば

一方Analog Mixerのメリットといえば

一方Analog Mixerのデメリットといえば

あたりでしょうか。Full Digitalな製品の良さもあればFull Analogな製品の良さもあります。

Soundlink MWシリーズに関しては基本的にはAnalog Mixerだと解釈してもらってよいのですが、Main L/R,AUX1,2のDynamics, Equaliser, DFX, Feedback (Supressor)の部分はDigital section(=DSP処理)となっています。

一旦Specと参りましょうか

アナログ・セクション

入力タイプ
XLRメス端子および1/4インチTRSメス端子
HiVoltマイクプリアンプ
-128dBu EIN, -10 ... -60 dBuの入力レベル。入力インピーダンス:3 kΩ
メイン出力への周波数応答(unity gain時)
+0.5 ... -1.5 dBu , 20Hz ... 20kHz
THDからメイン出力(20 ... 20 kHz, unity gain, unweighted)
0.004%
メイン出力に対するS/N比(Ref =+4db, 20 kHz BW, unity gain, A-weighted)
-70 dBu
システムクロストーク(Ref = +4 dBu, 20 Hz-20 kHz, unweighted)
入出力:-70 dBu
隣接するチャンネル:-90dBu
ゲインコントロールレンジ(±1dB)
10 dB ... +60 dB(Mic), -10 ... 40 dB(Line入出力時)
メイン出力
XLRメス端子および1/4インチTRSオス端子
最大出力レベル
+26 dBu
出力インピーダンス
75Ω
ヘッドホン出力
100 mW/ch. @ 32Ω load, 20 Hz-20 kHz (+0.5dB, -1.5dB)

コントロール

保存可能なセッティング
チャンネルのミュート, エフェクト, エフェクトのミュート, ミュートグループ, ブレーク設定, ダイナミクス, グラフィックEQ, フィードバックのバスへの割り当て
呼び出し可能なプリセット
4つのミュートグループ, 10個のグローバルシーンメモリ, 24個のFXメモリ, 10個のダイナミクス, 6個のGEQ, 16または24チャンネルのミュート, 3個のフィードバックバス割り当て

信号処理

デジタルマルチバンドEQ , コンプレッサー, リミッター, ノイズゲートをメインL/R, AUX1, AUX2に個別割り当て可能

モノラル・チャンネル
HI (12kHz/Shelving)
MID(Peaking/250Hz...5kHzまでスイープ可能)
LOW(100 Hz/Shelving), ±15dBブースト/カット
ステレオ・チャンネル
HI (12kHz/Shelving)
HI MID(2.5k Peaking*), LOW MID(250 Hz Peaking*)
LOW(100 Hz シェルビング型)
ハイパス・フィルター
12 dB/oct. 80 Hz
デジタルマルチバンドEQ
一度に選択可能な9つの周波数を持つ31バンド
Wide=1オクターブインターバル
Narrow=1/2オクターブモード
デジタルコンプレッサー
ハード:Attack=1 ms ... 40 ms, Threshold=+11 dB ... 0 dB
ソフト:Attack=1 ms ... 40 ms, Threshold=+11 dB ... -5dB
デジタル・リミッター
Attack=1 ms ... 40 ms, Threshold=+19 ... +3 dB
デジタル・ノイズゲート
ハード:Release=40ms ... 1500 ms, Threshold=-35 dB ... +7 dB
ソフト:Release=40 ms ... 1500 ms, Threshold=-50 ... +4 dB
スペクトラム・アナライザー
ピークホールド機能付き24チャンネル

デジタル・セクション

MAIN L/R Bus ADCダイナミックレンジ
115 dB(A-weighted)
AUX1/2 またはFX Bus ADCダイナミックレンジ
111 dB(A-weighted)
DAC ダイナミックレンジ
115dB(A-weighted)
USBステレオインプット/レコーディングポート
USB Class1
インターナルプロセシング
32-bit
AD/DA Bit Depth
Korg Tru-Bit-Perfect 32-bit
USB Bit Depth
24-bit
サンプリングレート
48 kHz/44.1 kHz
デジタルエフェクト
Rev Hall, Rev Hall Warm, Room, Warm Room, Rev Vocal, Rev Vocal Warm, Stage, Stage Warm, Plate Reverb, Plate Reverb Warm, Spring Reverb Warm, Analog Delay, Tape Echo, Variable Delay, Delay of the Korg SDD3000(!), Chorus, Flanger, Exciter, Sub Bass booster, 1 kHZ Test Tone, Slow Sweep, Fast Sweep, White or Pink Noise

一般

電源部
IEC • Input-Voltage Range: 100 ... 240 VAC, 50/60 Hz
インプット電圧レンジ
100 ... 240 VAC, 50/60 Hz
消費電力
45 W
推奨環境
0℃ ... 40℃
外形寸法(W x H x D)
MW-2408=480 mm x 187 mm x 530 mm(440 mm サイドパネル除く, 482 mmラックレール装着時), MW-1608=396 mm x 187 mm x 530 mm(356 mm サイドパネル除く)
重量
MW-2408=9.3 kg, MW-1608=8.0kg

*:発売時期によってはManualに「Shelving」と記載がありますが、誤植です。

MW-1608/MW-2408ともにCh1-8はMic/Line切り替え、Ch9-16(MW-1608)、Ch9-24(MW-2408)はMic/Stereo Lineを切り替えて使用可能です。Channel StripはEQ sectionが異なりますのでご注意ください。

特設サイトのDownloadからpdfマニュアルの閲覧が可能です。Block Diagramなど専門的な内容も記載されており、親しみやすいけれどしっかりした内容のコンテンツが魅力です。ぜひ御覧ください。

Sound Impression of MW-1608/MW-2408

では音に参りましょうか。とりあえず、届いたデモ機を弊社リハスタのスピーカーに接続してみました。

Power amp.などの設定は同じにして接続し直しての印象ですが、「音が近い」というものです。リハスタ常設のミキサーとは基本的な設計の年が違いますし、数年以上使用されている、ということを考慮する必要がありますが、MWはにじみの少ない良い音です。MACKIEのミキサーと比較できれば面白かったのですが、同価格帯の製品がなかったのでご容赦ください。Greg Mackieの設計なのでMackieサウンドを予想していたのですが、MACKIEのミキサーの音質とはだいぶ異なる印象を受けました。アメリカ人の設計だと言われれば納得ですが、しっかりした中域のコシと高域の煌めきのようなものもあります。いわゆる、「音が良い」Mixerといって良いと思います。

EQの効きもしっかりしていてLow bandをBoostしてもだぶつくことなくタイトな低域が持ち上がってくる印象です。

最近のミキサーらしく(?)モノラルchにCompressorを搭載しています。いわゆるOne knob Compressorで、絞りきりの状態でNo-processingで 最大値の状態で一番Compressionされている状態です。細かいパラメーターの記載はManualにもありませんでしたが、Threshold, Ratio, Output Gainなどが総合的に処理されているようです。

DSP

Digital sectionに移りましょう。前述の通りMain L/R,AUX1,2のDynamics, Equaliser, DFX, Feedback (Supressor)がDSPで処理されます。

処理の順序は

  1. Feedback Supressor
  2. Dynamics
  3. Graphic EQ

の順に処理され、それぞれON/OFFが可能です。DSPをBypassさせることはできません。

Feedback Supressor

処理の順にFeedback Supressorから見ていきましょう。

Soundlink MWに搭載されているFeedback SupressorはAuto Notch-Filterという状態で、細かな設定は不要でONにしておけばそれでOKという印象です。

Live等において使用する場合はMain L/Rのみならず、Foldbackとして使用することが多い、AUX1,2も常時ONにしておいて問題でしょう。

後述するG.EQのバンド数が9バンドなのでモニターのTuningでG.EQを使うと会場などによってはバンド数が不足することもあるかもしれません。そんなときには、全体の音質をG.EQで調整し、突発的なFeedbackにはFeedback Supressorで対応、というのがスマートだと思います。

Dynamics

Dynamicsですが、Presetとして

  • Hard Compression
  • Soft Compression
  • Noise Gate - Hard
  • Noise Gate - Soft
  • Limiter

が用意されています。Compressor,Limiterに関してはパラメーターとして[Attack]と[Sens]が用意されており、調整可能です。

[Attack]はAttack Timeで[Sens]に関しては、Threshold, Ratio, Output Gainが総合的に制御されている印象です。深くかけると少しComp感が出てきますが、なかなか自然な効きで、LimiterをInsertして若干Level Overにしてみましたが、自然にLimitingしてくれます。

Graphic EQ

Graphic EQに移りましょう。Feedback Supressorのところでも少し触れましたが、9バンドのGraphic EQが用意されています。

操作は簡単でdisplay下(手前?)のボタンで周波数を選んでエンコーダー・ノブでBoost/Cutを行います。

実はGraphic EQは2つのモード(Wide/Narrow)を切替可能でWideの場合には

  1. 63Hz
  2. 125Hz
  3. 250Hz
  4. 500Hz
  5. 1kHz
  6. 2kHz
  7. 4kHz
  8. 8kHz
  9. 16kHz

の1oct.幅の9バンドですが、Narrowにすると1/2oct.幅の31バンドから9つのバンドを選んで処理が可能です。

またBoost/Cutしたまま周波数を変更可能なので「Parametric EQ的に周波数を探る」という使用方法も可能です。

限られたリソースで妥協のない手法に、思わず「うーん、スマート!」と声が出ました。

Digital Effects

DFXにも少し触れておきましょう。

搭載されているエフェクトはSpecの記載の通りです。

controlできるパラメーターは2つと少し物足りないかもしれませんが、デフォルトの状態でそこまでの違和感はありません。すんなり効いてくれます。

Reverb系が12種類、Delay系が4種類、Modulation系が2種類、それに加え、ExciterとSub Bassです。

Preset 21-24はEffectというよりはUtility Sourceで、Test Toneが用意されています。

Preset 1-20までは作ったエフェクトの設定をUser bankに保存可能です。

FX returnはpost faderでAUX1,2にも送れます。

Other Features

MUSICIAN's PHONES

Soundlink MWは、上記などの機能からミニライブにも単体で対応が可能な印象ですが、それ以外の機能も充実しています。

AUX 3/4のouotputが独立したHeadphone amp.として使用可能です(MUSICIAN's PHONES)。その場合、MAIN L/RのPre Fader/Post DSPの信号とAUX3/4をMixした信号を送出可能です。
ただし注意が必要です。AUX3/4の信号はDSPを経由せず、Main L/Rの信号はDSP処理後の信号になりますので若干のLatencyが発生し、同じ信号をMain L/RとAUX3/4の両方のBUSを経由しMixしたときにPhasingが発生します。「同じソースを両方のバスには送らない」ということを注意すれば問題は少ないと思います。

USB Audio Interface

2chのUSB I/Fとしても機能しますのでちょっとしたプリプロなどの際に有用なアイデアですね。MAIN L/RのPost FaderがUSB outputに送出されます。Formatは44.1/48kHz、16/24ビット、ステレオです。

USB inはMW-1608の場合、ch15/16,MW2408の場合ch23/24です。Post Gainの場所にInpurされますのでEQをかけることも可能です。

USB I/Fが出たところでドライバーにも触れておきましょう。
公式ページのダウンロードから入手可能です。MacはCoreAudioで作動しますのでドライバー不要です。FirmwareのUpdataerもこちらに掲載されていくようです。

Mute group

あと嬉しいのは、このサイズにはなかなか搭載されることの少ない、MUTE GROUPでしょうか。MACKIEのミキサーでもおなじみ(?)のBREAK Buttomは搭載されていますが、4BanckのMute Groupが搭載されています。

同じChを別のMute Groupに登録することも可能ですのでなかなか有用だと思います。

Mute GroupでMuteしたChとChannelのMuteでMuteしたchはMUTE indicatorが異なる発色になりますのでMute/解除漏れも少なく、更にはMuteGroupでMuteした状態でもChのMute buttomで一時的にMUTEの解除が可能です。

登録は非常に簡単で、Bank Masterのbuttonを長押しするとBank Masterのbuttonが点滅します。この状態で登録したいchの[MUTE]を押せば選択可能で、再度Bank Master buttonを押せば登録完了です。

iJack

Stereo Inとして3.5mm streo phoneジャックが利用可能ですのでスマートフォンから再生してBGMなどに活用可能です

Talk Back

このサイズのミキサーには珍しく独立したTalk back Inputがあります。HA回路がHIVOLT HAと同じかどうかはわかりませんのでこの回路を使用しての肉声チューニングは避けたが懸命だと思います(むしろMarge pointがPost DPSなのでそもそもTuningできないです)が、Talk backのためにChを一つ潰さなくて良いのはありがたいです。

Afterwords

Soundlink MWシリーズの使用場所としては

あたりなイメージでしょうか。

結構これ1台で色々できそうな印象です。

音が良いミキサーに加えて、Sync sourceを使用する場合のことを考えてもMUSICIAN's PHONESが大いに役立ちそうです。

ただ、リハスタの常設Mixerとなりますと、不特定多数の人間が操作することになりますのでDSPの設定をLockできるとなお良いかと思います。

この辺はFirmwareで対応可能なのでは無いかと思うのでぜひ、Updateの項目に追加していただきたいですね。

Keyboard Mixerとしてはとても優秀だと思います。

Keyもステレオで出力したい楽器とモノラルで出力したい楽器がありますので非常に良いかなと。MUSICIAN's PHONESを活用すればClickをHeadphoneでモニターすることが可能です。

ミキサーの大前提である音が良いことに加えて様々なシーンで使い勝手の良い設計がされている印象です。

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checker: Takumi Otani

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