JBL PROFESSONAL
EON ONE

今回見ていくのはJBL proがリリースしたオールインワンPAシステムEON ONEを見ていくことにします。スピーカーのレビューとしてはRCF EVOX 8以来数ヶ月ぶりです。

サブウーファーを搭載し,Hi/Midはアレイスピーカーという構造です。

早速見ていきましょう。

Product Overview of EON ONE

まずはSpecから。代理店ページからの転載+加筆です。

形式2-Wayパワード・フルレンジ
周波数レンジ(-10dB)37.5Hz ... 18.5kHz
指向角度(水平×垂直)100°x50°
最大音圧レベル118dB SPL(ピーク)
ドライバー構成HF2インチ×6
LF10インチ(254mm)
パワーアンプ380W(LF:250W+HF:130W)、Class D
入力チャンネル数6(2モノラル+2ステレオ)
端子・形式CH1:XLRと標準フォーンジャック(3P)対応の複合型端子×1
CH2:XLRと標準フォーンジャック(3P)対応の複合型端子×1
CH3&4:標準フォーンジャック(3P)×2(ステレオ)、RCA×2(ステレオ)
CH5&6:3.5mmミニフォーンジャック×1(ステレオ)
インピーダンスCH1:【XLR】40kΩ、バランス【TRS】40kΩ、バランス
CH2:【XLR】40kΩ、バランス【TRS】40kΩ、バランス
CH3&4:【標準フォーンジャック】20kΩ、バランス【RCA】5kΩ、アンバランス
CH5&6:【3.5mmミニフォーンジャック】10kΩ、アンバランス
モニター出力端子・形式RCA×2(ステレオ)
イコライザーBASS/TREBLE(-/+12dB)
インジケーターLimit、Bluetooth、Power(前面、背面)
電源AC100V、50/60Hz
エンクロージャーポリプロピレン製、黒
寸法(W×H×D、除突起部)使用時(最大):373×2,017×498mm、収納時:373×596×498mm
質量20kg
付属品電源コード、和文取扱説明書

ジョイント部x2+Hi/Mid Speaker部となっておりそれらはSubwooferの後方に収納できるようになっています。Hi/Mid Speakerの設置の高さはジョイント部の使用/不使用により3段階に設定可能です。これによりスタンディングでのスピーチでの使用や座っての弾き語りLiveでの使用の際にもちょうどよい高さへ柔軟に対応します。また,指向角が100°x50°(水平×垂直)とかなりワイドですのでHi/Mid Speakerが目線に無くてもさほど問題にはなりません。

またBluethoothでペアリングも可能ですのでオケをiPhone等から再生し,歌とギターとKeyのLiveといったことも可能です。細かい調整はできないながらもReverbは搭載しています。

Bluethoothの入力はMaster Volumeの直前に入力されEON ONEではBluetoothの音量制御はできないので再生機側がVol MaxでEON ONE本体のMaster Volumeが程よく上がっていると爆音がでます。ご注意ください。

入力インピーダンスが40kΩと結構高めなのでマイクを入力したときでも結構Volを上げないと音量は稼げません。Line入力に関しては,百歩譲ってまぁ理解できるのですが,Mic入力のインピーダンスが40kΩというのはちょっと高すぎると思います。
入力部にLine/Micの切り替えはありますが,おそらく,TRS/XLRの回路切替+Padが入っている程度なのだと思います。コストダウンのためかもしれません。

また,これは僕自身がエンジニアだから感じるのでしょうが,所謂UNITYがどこかわからないのがちょっと不便といえば不便です。ただ,自己完結するシステムなのでLimitが光りっぱなしにならなければ大丈夫なのでしょう。

同じようなコンセプト(と言うよりは構造)のRCF EVOX8と比較すると最大音圧が118dB SPLとEVOX8に比べ20dB SPLほど差があります。搭載しているアンプが違うので仕方ないといえば仕方ありません。
おそらくEVOXシリーズの様にOperatorが付いてくれていてFoHとして使用するというよりはセルフライブという感じに近いんだと思います。音響機材に限らずでしょうが,一般の方にわかりやすく使いやすいとすると複雑な部分を削っていかざるを得ず,その道のプロの人間からすると「ちょっと物足りない」ということになるのかもしれません。

ただ,EON ONEをデモや現場で使っての印象ですが,意外とよく考えられているということ。

デモで会場に持ち込んでSM58を接続してChのVolを上げていくと程よい音量を確保するには,つまみの位置は3時以上になり間違えてVolが更に回されても出力される音量はさほど大きくなりません。また,それ以上大きくしようとするとやはりハウリングが起きやすくなるのですが,「よくわからないままVolを上げてハウリングでSpeakerが破損した」みたいな事態は意外と防げるのかもしれません。

こうなるとMic入力のインピーダンスが高いのも納得です(Attenuationで解決できそうな気もしますが...)。

Sound Impression of EON ONE

さて,2つの現場に持ち込んで使用してみました。1つはレストランイベント,もう一つはちょっとしたHallでのJazzのライブです。

レストランイベント

つくば市内で開催されたベリーダンスのイベントの音響照明のご依頼をいただき,現地調査で会場に伺ったのですが,おしゃれなレストランです。

BGMなどの音響設備はあるものの,主催者と3者で話をすると,やはり無理があるのではないか,とのこと。最初はポールマウント型のスピーカーも考えたのですが,ポールマウントだと三脚がある程度広がり,店内を移動している際に引っ掛けたりしないかちょっと不安でした。また,ステージとして使用するエリアはお店のコーナーを背にした,扇形のイメージとのことで所謂ステージサイドにFoHがL/Rというのがちょっとむずかしい状況でした。設営,撤収の時間などもありEON ONEを持ち込むことにしました。写真を見ての通り三脚が広がることはありませんし,指向角は水平100°と申し分ありません。上下に50°開いた指向性のお陰で,2階席(といっても60cmくらい高低差ですが)にも充分な音質が提供可能でした。

ちなみにその時はConsoleを持ち込んだのでEON ONEは純粋なパワードスピーカーとして機能してもらった感じです。Ch/Master VolともにフルにしてConsoleで+4dBuくらいで出力してやってちょっと大きいかな,位です。

サブウーファーも搭載していますから低音もずっしり出力され好印象ですし評判も良かったです。

後日Pink Noiseを入力しLimitが点灯する段階を調べていったのですが,Ch1,2にステレオで入力,Ch/Master VolはMaxの状態で-12dBfsで点き始めました。2台用意してステレオで使用する場合にはおそらく3dB余裕があるでしょうからDigital Mixerの-9dBFsを目安にしておいていただいても良いと思います(Consolseによりレベルキャリブレーションはまちまちですので目安の一つとしてください)。

Jazz Live

ちょっとしたホールと記載しましたが正確には1辺25mくらいの大会議室です。大会議室ですがステージ(10m x3.6m)が設置されており,照明用バトンも設置されているという素敵な空間です。今回の客席は300席位でしょうか。アンプ出力からの観点だと普通に考えると出力不足かと思いますが,

  • アレイスピーカーであるということ(=遠達性に優れている)。
  • JazzのLiveであるということ(=爆音は必要ない)。

という観点からFoHとして持ち込んでみましたが,一番期待したのはアレイスピーカーに見られるステレオの再現性の高さです。

低音が響く会場だったので中高域をしっかり届かせつつステレオイメージをしっかり客席に伝えたかった,というのがあります。ステレオイメージの再現性はPoint sourceでも1対向であれば可能でしょうが,やはり音の減衰の観点からセンターずれた部分での左右のスピーカーからの音の聞こえ方には差があります。

また,入力も12inputほどでしたのでHearoomも観点からも問題ない,という判断での採用です。Reinforceしてスピーカーから思い切り出す,というよりはVocalを中心に他の楽器を添えてあげる,というイメージと言うんでしょうか。ただ,やはりJazzの醍醐味,Soloはしっかり出力されないと困ります。Kickがみぞおちに響く必要はありませんが,DrummerがBass Drumを踏んだときにわからないのでは困ります。

出演者の編成はDs+Pf+Gt+Ba+Per+Vo+Horn sectionのBigBandとPf+Ds+Baのトリオ編成にVocal+Saxが加わるというダブルヘッドライナーです。

さてさて,イベント当日,搬入しとりあえずで位置を決めて回線確認です。空間容積があるのと会場の特性なのでしょう。中低域に残る感じの残響があります。チューニングを施しレベル確認です。CDを再生しアシスタントにLimit Indicatorを見てもらいます。MixerはYAMAHA LS9だったのですが-12dBfsくらいでKickのPeakに合わせてLimitが点灯します。jazzという部分もあり会場の音量は充分したので一安心。更に突っ込んでみましたがLimitのせいで音が破綻するようなことはありませんでした。

モニターのTuningを終え,そうこうしているうちに出演者の方の会場いりです。リハも大きな問題無くすんなり進行し,BigBandのリハに移ります。Horn Sectionは特に拡声しなかったのですが,バランスもとりやすく言うことなしです。

さて、本番,お客さんも入り、中低域の解像度がある程度改善し、よりOpeしやすくなりました。若干EQの補正をしつつのOpeですが,非常に快適にOpeできました。

会場関係者,出演者の評判も上々です。

Opeしやすかったのは出演者の技術も大きかったことを付け加えておきましょう。演奏がしっかりしておりConsoleでDynで思いっきり叩く,みたいなことは皆無でした。

Opeは会場後方だったのですが,やはりArray Sourceと言うこともあり,アンプ出力と距離減衰がPoint Sourceと違うのでConsoleのMeterの振れ方の割に聴覚に届く音量は充分な印象です。VocalやSaxなどはFaderの上げ下げがシビアに反応します。

Bass Drumもしっかり見え,Revもきれいに反応します。僕の目論見は成功したと言っていいでしょう。

Afterwords

FoHとして考えたときにはやはりRCF EVOXの方に軍配があがると思いますが,お手軽PAセットからちょっとしたFoHとして使えるSub+Array SpeakerとなるとEON ONEのほうが有利でしょう。

逆に言うと今回のチェックで上記会場くらいのFoHとして使用できるというということが証明されたのは大きいと思います。

つくば店にてデモ可能ですのでお気軽にお問い合わせください。

JBL PROFESSONAL,EON ONE 画像

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