Antelope Audio
Verge

さて,今回見ていくのはペンシル型コンデンサーマイク,Antelope Audioがリリースしたモデリング用マイクVergeです。

モデリング用マイク,といっても実際のモデリングはFPGA,Plug-inで後段で行われます。

早速見ていきましょう。

Product Overview of Verge

ざっくりスペックですが、

ダイアフラム
Back-electret condenser
指向性
単一指向性
周波数特性
40Hz ... 20kHz
感度
-40dB | 10mV/Pa (+/-3dB)
Self-noise
25dB(A)
Max input SPL
146dB
SNR
69dB(A)
出力インピーダンス
65 Ohms
駆動電源
48V DC Phantom Power
コネクター
3-pin male XLR
Color
Black matte
重量 (mic body)
155 g
寸法 (mic body)
155mm x 22mm
Breakout Cable
not included
Mount
Shock absorber type

AKG C451 Bより一回り太く、少し短いといった印象の外観に、C451 Bより少し重いかなという重量で見た目通りの重量感のマイクです。

ショックマウントホルダーも付属してきます。3/8inchi,5/8インチ両方に対応します。Floatingタイプの製品で本体をガッチリホールドするタイプの製品では無いので、長年使用してゴムが伸びてきたりすると、マイクを下向きに設置などの場合にはちょっと不安ですが。そのときにはゴムを交換するか、RycoteのInVisionシリーズなどのほうが安心かもしれません。
とはいえ新品の現状では不安感は一切ありません。

PADなしの状態で146dB SPLまで行けるのはすごいですね。

前述の通り、Vergeは単なるペンシルマイクというだけでなく、マイクのモデリングが可能です。

Plug-inの詳細はAntelope Audio Jpのページをご覧いただくとして、本日現在、

というモデリングが用意されています。

名前と写真から推測するに、

とかでしょうか?
Illinois = SHUREとVienna = AKGはまぁ当たっているでしょうね。BerlinはMicrotech Gefellの可能性も否定出来ないのであくまで推測です。ま、GefellもGeorge Neumann設立の会社ですから以外と外れていないのかもしれません。
推測の域を出ないので違っていても責任は取れないのですが、切り替えてみてしっくり来たマイクでMixを進める、という方が変な先入観にとらわれなくて良いのかもしれません。

ペンシルマイクだと代名詞のAKG C451が入っていないのがやや気になりますが、現行品を入れるといろいろ問題があるのかもしれません。

とするとAKG C452とかは将来アップグレードで追加されるかもしれません。となるとVintageのC451EやC451C、C61なども期待できますね。
またIllinois 57, Vienna D112が僕の予想通りだとすると(笑)ダイナミックマイクのモデリングも行われているようで嬉しいですね。

Sound Impression of Verge

さて実際の音に参りましょう。まずVergeの音の印象からです。

まずはDsのOverheadに使用しました。

いつも使用しているマイクと比べて感度が6dBほど低いのでその分Gain upが必要ですが、Noisyになることなくすんなり設定が可能です。

音質傾向としてはAntelopeらしくやや冷たくありつつもしなやかな印象です。解像度など申し分ありません。

Gt Ampに使用したのですが、さすがにマイク内でクリップしました。ここは仕方なく他のマイクに交換です。交換したマイクはPADを入れると156dB SPLまで対応可能なマイクなのですが、だったのでマイク位置で146dB SPL以上、156dB SPL以下くらいだったのでしょう。Gt Ampの音量が結構上がっていたのは事実です。E.GtのFeedbackを収録したいという状況だったので...。

まずここまでの印象としては、優秀なペンシルマイク、という印象です。市販されているマイクと比べても何ら引けを取らないマイクで広く使っていけるでしょう。ただ、前述の通りPADがありませんので高音圧なものには注意が必要です。

別のタイミングでDs周りに使用してみました。壊れないのか心配でしたが、Antelope AudioがHit Harder という動画を掲載しているので大丈夫なのでしょう。

今回試せたのは2本なのでKickとSnare topにしました。録音ではSnare TopにAKG C451, sE electronics sE3を、KickにCAD e100, ASTON SpiritをDynamic Micと併用することがありますが、やはり PAD/Att.は使用しますので心配です。

Mic Positionにも影響すると思いますが、今回Kickは特に歪んだ印象は受けませんでしたが、Snが少しマイク内部でClipしているかな、という印象です。

意外とTomなどは行けるかもしれませんね。

Cheking the VERGE Emulation

Vergeを購入するとVerge EmulationのPlug-inのライセンスが入手可能です。使用に際してはiLok2/3が必要です。
作動環境などはVerge Download sectionをご覧いただくとして、せっかくなのでVerge Emulationの実力を比べてみました。

Vintage Micの実機が無いのでVintageとVerge+Emulationを比べる、ということができないのですが、ほぼネタバレのVienna D112、 Illinois 57に関しては検証可能なので、ほぼ同じ場所にKick:AKG D112, Snare:SHURE SM57を立てて収録して比較してみました。もちろんHAはそれぞれ同じものを使用しました。

本来であればVerge, EdgeはAntelope AudoのHA+Converterを経由しての音が本来のメーカーが開発したマイクモデリングの音だと思いますのでここで僕が聴いている音はその音とは異なると思いますが、同じHA、同じConverterを経由しての音なのでモデリングが優れていれば同じような音になるかなー、ということでの検証です。

Plug-inをインサートしてそれぞれVienna D112, Illinois 57を選んで試聴です。

メーカー推奨の環境下で録音したわけでは無いので音 Uploadは控えますが、印象を記載すると、「気持ちは判るが、やはり違う」という感じです。ただ、ギターアンプのモデリングなどもどんどん進化してきていますし、Edgeシリーズやその他メーカーのマイクモデリングを試したわけでは無いので今回のこの1件でマイクモデリングを否定するつもりはありませんし、むしろ可能性を感じます。

と同時に実機を所有している、使える環境の強みも感じました。「あとで多分こうなる」というサバ読みではなく、聴いているものが今そこに録音されたものだからです。もちろんDAWのDSP処理も進化していくでしょうからPlug-inを挿しっぱなしにしたり、FPGAで処理すれば聴いているものがそこにあるものなのは間違いないでしょう。

現状ではVerge EmulationはPreset EQという感じの捉え方が一番事故が少なくなるような気がします。おそらく周波数特性だけでなく位相特性もいじっているでしょうからEQよりは更に突っ込んだ音の処理がなされているでしょう。

さて、Emulationに関してですがこの動画も回りやすくていいですね。
マイクを変えた!という感じがします。

折角(?)なのでどのくらい周波数特性が違うのかoscilatorとanalyserを使用して調べてみました。どちらもAAX Plug-inです。

切り替えていくと、「おー、結構違うもんだな!」というくらい音とカーブが変化します。カーブの変化よりは音の変化のほうが大きく感じられますがが、環境にも依存するでしょう。折角なのでscreen shotを掲載します。

White Nose AnalyzerVerge AnalyzerAalborg_4006 AnalyzerBerlin_184 AnalyzerBerlin_K53 AnalyzerBerlin_K54 AnalyzerBerlin_K66 AnalyzerFreiberg_6 AnalyzerHumberg_211 AnalyzerHumberg_441 AnalyzerHumbrg_40 AnalyzerIllinois_7B AnalyzerIllinois_57 AnalyzerPerth_55 AnalyzerVienna_D112 Analyzer

Afterwords

あとからマイクを変える、いやーいい時代になったものです。
マイクというのは言わずとしれた音の入口であり銘機と呼ばれるマイクはそれぞれ個性を持っています。もちろん 本物があれば言うことなしなのでしょうが、高価なVintage Micを揃えるCostを考えるとこういったEmulationも、考えようによっては選択肢に入ってきます。

Vergeは普通に良いマイクだと思いますが、Emulationで様々なマイクの音が手に入るのはありがたいですね。
とりあえずVerge, Edgeで録音しておいてMixingでいろいろ...、という発想には感心しませんが、可能性が広がるという意味では悪いことではありません。クラウドベースでセッションが進むような時代です。「主要楽器はMixing段でVintageに差し替えるからEdge、Vergeを使って収録してくれ」みたいな条件がつく日がくるかもしれませんね。

マイクモデリングを外して考えても優秀なマイクだと思います。

繰り返しになりますがVergeは優秀なコンデンサーペンシルマイクです。きっちりしたクオリティで収録できる、ということがVergeを使用する最大のメリットかも知れません。

Antelope Audio,Verge 画像

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checker:Takumi Otani

Antelope Audio,Verge
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