Antelope Audio
Orion Studio
お久しぶりの機材レビュー更新です。サボっていたのではなくライブのOperarionが重なりなかなか新製品をチェックできなかったのです。今回はAntelope Audio のOrion Studioを見ていきましょう。
Thunderbolt™/USBのオーディオインターフェイスです。
Product Overview of Orion Studio
さて、届いた本体を開けてみると「やはりAntelope Audioの製品だな」と感じます。厚めのアルミフロントの1Uサイズです。フロントにはXLR/PhoneのNeutrik Combo Jackが4基、トークバックボタン、設定に使用するロータリエンコーダー、GAINへのアクセスボタン、Headphoneへのアクセスボタン、モニターA/Bの切り替えボタン、ディスプレイ、メニューボタンが3つ、Headphone jackが2つ、Reamp用のOutが2つ、搭載されています。
背面は右からInsert I/O(Input 1,2)XLR Combo jackが8基、WCのIn/Outが各1つずつ、S/P DIFのin/Outが各1つずつMonitor A/BのOutputがステレオで用意されさらにはDB25のアナログ出力が2系統合計16ch出力可能です。ADAT(S/MUX)のI/Oも2個ずつ用意されています。さらに左にはUSBとThunderbolt™端子があり電源はACアダプター経由です。これはちょっと残念ですが、スペースなどの関係でしょう。ただ,差しこむだけではなくきちんとLockのかかるコネクターになっています。
Sampleing rateは32,44.1,48,88.2,96,176.4,192kHzに対応します。ClockはAntelopeのいう所の4th Generation Clocking Technologyです。Clock Sourceは
- Oven(=Internal)
- External Clock
- ADAT
- ADAT x2
- ADAT x4
- S/P DIF
- USB
- TB(Thunderbolt™)
です。
USB/TBに関してはすこし説明が必要でしょう。この表示になっている時には,「周波数の決定はUSB/TB(=DAW)に従うがClockのMasterはOrion Studio」となります。
USB/TBに接続した時には半強制的にこのモードに移行しますが,External Clockを使用したい場合には,まず,DAWのクロックとExternal Clockを合わせ,Orion StudioをExternalにLockしたうえでUSB/TBで接続しする必要があるとのことです。
本体内部にDSPを搭載し、AFXと呼ばれるエフェクトや16chのミキサーを4つ搭載しています。MIXER1にはAuraVerbというリバーブも搭載しています。なかなか上品なリバーブで馴染みも良いです。USB接続時は24chのI/FとしてThunderbolt™接続の際には32chのInterfaceとして使用可能です。
これらのコントロールは Orion studio launcherで行います。暗めにデザインされた画面はメーターの表示や各インジケーターが見やすく、長時間の作業でも目があまり疲れないようにデザインされているようです。
本体はシンプルにできておりHAのGain設定などは行えますが、ソフトを使って画面で行った方が楽だと思います。MP8dのようなHAだと「いちいちPC繋ぐのもなぁ、」という方もいらっしゃるかもしれませんが、Orion StudioはInterfaceということで接続が前提だと思いますのでさほど気にならないと思います。画面を切り替える手間、くらいでしょうか。
メーカー本国ページにもいくつか記載されている特徴を見ていきましょう。
12 CLASS-A MIC PRES
先ほどの通り12基のHAが搭載されています。端子は全てNeutirk Combo™ jackでフロントに配置された4基はMic,Line,Hi-Z instを入力可能です。背面の8基はMic,Lineの切り替えのみです。
増幅率はMIC:0dB...65dB,LIne:-6dB...20dB,Hi-Z:0dB...40dBです。
+48VDC,Phaseのコントロールも装備しています。奇数チャンネルには右隣の偶数チャンネルの同時コントロールを可能にするLinkも用意されています。
VINTAGE GUITAR FX
ハードウェアベースのFPGAエフェクト搭載とあります。
これは執筆現在Orion Studio,Goliath,Zen Tourにのみ搭載されいる機能です。
AFXの機能の充実ととらえて良いと思いますが、EQ,Compも見た目がずるい感じのVintage FXがシミュレートされていたり、Gt用のアンプシミュレータ(Amp Line up/Amp Line up)などが選択式ながら加わっています。1chにつき最大8基並べることが可能です。感覚はまさにDAWのPlug−insです。
AFXもステレオリンクが可能です。こちらは本体のFirm Upとともに機能が増えていくそうです。これはありがたいですね。
ただ、Orion studio内部のDSPを使用しているためNative Dawと同様に数に限界はありますので注意が必要です。
Vintageのシミュレート系がやはり結構消費するようですが、うまく使えばPlug-insとは別のキャラとして使用することが可能です。
Orion Studio LauncherのRoutingをうまく使えばDAWにAFXを駆使して作り込んだ音を録音することも可能ですし、とりあえずで録音しておいてMixのときにInsertすることも可能です。
A/B Monitoring
先述の通りモニター出力がは2系統用意されています。モニターセレクターとして使用可能です。
MP8dのときにも簡単に記載しましたがRoutingの基本的な概念は変わっていません。マウスでドラッグしてアサインしていきます。Patch bayをパッチする感覚と同じです。
"From"と"To"に分かれており,Fromに配置されているPortはToにアサイン可能です。ただ、MIXER 1のOutputをMIXER 1のInputにアサインできるのはちょっとどうかと思います。Loopして発振しますのでRoutingの際にはご注意ください。
PREAMP 1-12までをLINE OUT1-12にアサインしてマルチチャンネルアナログHA的な使用方法も可能です。
Routingの自由度が高いのでSpliterとして使用することも可能でしょう。
AFXもPREAMPからの信号をアサインしてchannel Strip的な使い方も可能ですし、USB PLAYを割り当ててMix時のプラグイン的な使用方法も可能です。
Orion Studio LauncherのRouting画面を見ていてふと不思議に感じたのがTB(=Thunderbolt™) Play,USB Play,USB Rec, TB RecとThunderbolt™とUSBの入出力が常に独立して表示されています。同時に2台のPCに信号を送れるのでしょうか?
もしできたらかなり熱いI/Fです。USBのモニターをHeadphone1にThunderbolt™のモニターをHeadphone2に返しておけばモニタリングも困りません。
今回はPC2台用意できなかったので試せませんでしたが気になります。
DAWはPro Tools 12 Nativeです。
Sound Impression of Orion Studio
さて、実際の音に参りましょう。
さて,今回の環境ですが,Mac OS 10.10 Yosemiteです。メーカーページには"OS X: 10.9/10.10/10.11 (El Capitan 10.11.5 Recommended)"とあったのですが,何ら問題なく使用できました。
今回はアカペラの録音で試してみました。同ブースでダイナミックマイクを使用しての同時録音の後、1人ずつ差し替えていく形です。
今回届いたデモ機がプロトタイプで+48Vの機能が使えなかったので差し替えは弊社のHAを経由しています。ちょっと残念ですが、Lineを受けたときにそのような挙動をするのか、AFXの性能はどうか、もチェックできます。無駄に前向きにとらえていきます。
まずHAの印象ですが,MP8dの時と同じくすっきりしていてしなやかな音質です。EQやCompの反応も良く優れたHAであることを実感できます。HA自体のキャラクターは弱めな印象ですが,DAWにどんどん録音していってPlug-inを掛ける,という最近の流れにはマッチしている印象です。ただ,重ねていっても音が滲みにくい印象です。
さて,ベーシックの録りは難なく終了し,差し替えの録音です。
前述のとおり+48VがかかりませんのでスタジオのHAを利用し,ADコンバーター+EQ+Compとして使用しました。
HAの方をすこしドライブしたかったのでLineのGainは-6dBに設定しました。
HAの印象はいつもとあまり大差ないのでやはりAD含めフラットな回路になっているのだと思います。
EQ->Compの設定にして予め音を作りましたがレベルもしっかり抑えてくれて言うことなしです。AFXかなりしっかりかかります。
構造上仕方ないのですが,HAのあとでというかCompの前でADされているのでレベル設定には余裕をみておいたほうが良いとも思います。
さて,印象が良かったので今度はOrion StuidoをMix時のエフェクターとして使用してみました。
ProToolsのI/OからInsertを設定して,LauncherのRoutingで,USB PlayをAFX INに,USB RecにAFX Outをパッチングです。
前述の通り使用できるエフェクトはDSPパワーFPGAの容量(2016/11/17修正)に依存しますのでVintage EQ+Vintage Compの組み合わせでMixしようとしたら5個くらいでFET-A76が限界に達しました。仕方ありません。Center Line物を中心に再度組み直しです。
画面を見れば何のシミュレートが大体わかります。見た目がずるい、と書いたのはそういう理由です。
ソフトに対応するVintageを持っていないので比べられていませんが、単純にEQ,Compと使用してなんら不足ありません。
心なしかくっきりかかる印象があります。
今回は試せませんでしたが、DAWのOutputをパラでOrion Studioに送って内部のミキサーでサミングする、というのも面白いと思います。
Afterwords
Reamp回路も搭載しておりますので,まさにこれ1台で至れり尽くせりです。
ソフトかハードかは別として、
- HA
- EQ
- Comp
- Mixer
- Reverb
- Reamp
- Monitor Controller
- Headphone Amp
が搭載されています。
なぜ本機に"STUDIO"という名称が入っているのか製作者の意図がわかった気がしました。
USB/TB PlayをAFX経由でReampさせることも可能ですから,かなりしっかりしたReampできると思います。
1Uサイズにスマートに多くの機能が詰まったI/Fです。Launcherの操作性はもう少し良くなるとあり難いです(決して「悪い」印象ではないのですが,フィジコンと併用するとポインティングデバイスの弱点を感じます)が,ファームウェアのUpdateで良くなっていくと思います。
このクオリティのHAが12基搭載され,更にエフェクトも使えるとなるとなかなか匹敵する製品ないんじゃないかと思います。
Dsの録音などで「8chじゃちょっとな~」とお感じの方,ぜひとも選択肢に入れてみてください。
マルチユースで非常に考えられたInterfaceだといえます。
date:
checker:Takumi Otani
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