AKG
K812

さて,今回のレビューはHeadphone,AKGがリリースしたK812です。

かなりすごいらしい,という噂は聞いていたのですが,聞いたのが噂ではダメですからね,はやり実機の音を聴いてみたい,と思うのが人情です。

Hibino I藤さんのご好意により試聴ができました。いつもありがとうございます。

Product Overview of K812

さて,届いた箱を開けると黒いケースが出てきました。重いなぁと思ってよくよく見ると箱が段ボールではなく,キャリングケースも兼ねているような素材です。中を開けてみるとHeadphone Standまであり不覚にも笑ってしまいました。AKG本気です。

Specです

形式
open-back
周波数特性
5 - 54000 Hz
能率
110 dB SPL/V
最大入力
300 mW
Impedance
36 Ohms
ケーブル
取り外し可能
ケーブル長
ストレート 3 m
イヤーパッド
取替え可能

まず,特筆したいのが54kHzまで伸びた周波数特性ですかね。96kHzのセッションも少なくない昨今ですから恩恵は十分に得られるでしょう。

あとはインピーダンスが低めでしょうか。

ケーブルは脱着可能で,本体とのコネクターにはLOMOが採用されています。今まではswitchcraftのmini-XLRdが採用されていることが多かったのでちょっと意外でした。

あ,あと装着感は最高です:-)。

Sound Impression of K812

さて,音に行きましょう。とりあえず,僕のここ数年のReference KRK8400を用意してCDソースでチェックです。

AKGの共通の特徴かもしれませんがHeadphone Levelをかなりあげる必要があります。
Headphone Ampの性能を引き出すことができるので良いですね.

...凄いです。聞き慣れたReference Sourceがフレッシュに聞こえます。あれだけ聞き慣れたソースにまだ別の表情があったのか,と驚きすらあります。

マスタリングスタジオの吟味され尽くした機材を用いての試聴,きちんと調整されたLarge Monitorの様な聞こえ方です。Audio ShopのListening RoomのSweet Spotでの試聴,といったら伝わりますでしょうか。

トランスデューサーが左右にあるのでステレオソースが左右に定位するのは仕方ないのですが、音像が脳内定位しないのは驚きです。いや、脳内定位しているのでしょうが、音像に広がりがあり、奥行きがきちんと感じられます。
広めに設置した良質のモニター、というイメージが一番近いでしょうか。
ここまでのHeadphoneであれば、モニタースピーカーはなくてよいのかもしれません。

ヘッドフォンを切り替えてみました。
聞き慣れた感じというか音像がこじんまりします。価格差が10倍近くありますので仕方ないですね。

ソースをいろいろ試してみました。クラシック、ロック、スタジオ録音、Live録音、音がよいといわれるCD、あまりよくないCDなど。
よいものはよく、よくないものはそれなりの再生です。
Monitor(=確認)のためのヘッドフォンですね。決して辛口なのではなく、正確という印象が大きいです。
装着感もよく、音像がきれいに広がるのできれいにMixされたLive録音はすばらしい再生をしてくれます。
20年くらい前のCDを聞いてみましたが、Lip Noiseが聞こえます。DAWの普及以前ですからあまり細かなEditは行っていなかったのでしょうが、今回はじめて気がつきました。
大げさな表現かもしれませんが、Headphoneの存在を忘れて音楽だけが再生されている印象に近いです。

マルチトラックも聴いてみましたがMonitor Speakerと印象が大きく変わらないのが驚きです。
ADAMを使用しているのですが,原産国が近いというのも影響しているでしょうがなかなか希有な体験です。K712 PROを購入しようか悩んでいたのですがこれ聴いちゃうとなー,という感じです。

僕の思い込みだったらまずいのでほかの人間にも聞いてみてもらいました。

みんな高評価です。共通した見解に前述の「きれいに広がり奥行きのある音像」があげられます。

本国のwebに記載されているのですが、transducerには1.5T(テスラ,磁束密度の単位)の磁石が使用されているとのことです。

With the strongest magnet system available on the market, the K812 provides the most precise and powerful experience possible. The 1.5 Tesla magnet system offers highly accurate imaging leading to pure, natural sound.

(K812 | AKGより転載)

市場で入手可能な最も強力なマグネットシステムでK812は可能な限り正確で力強い体験を提供します。その1.5テスラのマグネットシステムは純粋で自然なサウンドにつながる高精度な音像を提供しています。

(筆者訳)

とのことです。1.5テスラがどのくらいすごいのかはわかりませんが,市場で入手可能な最も強力とのことなのでそれ相応のものでしょう。砂場で落っことしたら砂鉄まみれになるかもしれませんね。
冗談はさておき,その効果はきちんと我々エンドユーザーが確認できます。

褒めちぎっているだけだと胡散臭いので、否定的ではないのですが、別アングルからの意見も記載しておきましょう。

試聴していただいたYさんにいただいた意見なのですが、

Headphoneに何を求めるかによってはK812ではなくてもよいのかもしれない。Speakerのような空間の広がりを求めるのであればK812はすばらしい製品だが、SpeakerはSpeaker、HeadphoneはHeadphoneとなるとちょっと違うのかもしれない。

と。
冷静な意見です。
ただ、そのYさんもいろいろソースを試聴して、K812で初めて聞こえた音がある、というポテンシャルの高さは認めていただきました。

Afterwords

いままで色々なReference Monitor Headphoneを聴いてきましたが,間違いなく最高のHeadphoneです。"Monitor"と"Listening"を高い次元で融合しているHeadphoneといってもよいでしょう。

スタジオのConsole Outputはこういう音だったんだろうなぁ,と思えるHeadphoneというんでしょうか。伝達系数が最も"1"に近いHeadphoneでしょう。

AKG,K812 画像

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