Ehrlund Microphones
EHR-M

さて今回見ていくのはEhrlund特許 "トライアングル・カプセル・メンブレン" コンデンサー・マイクロフォンのEHR-Mです。最初見たときには変な形のダイアフラムだなぁ、と思いましたが、別に円形以外のダイアフラムはEhrlund以外にも存在します。audio-technicaの50シリーズも長方形のダイアフラムです。

何の気なしにYouTubeを見ていてふとEHR-Mの動画を見つけました(よくある「比べてみた動画」です)。そこでの印象が非常によく気になり始めいろいろ調べるとオタリテックさんが扱っているとのことで担当さんに連絡を取りデモ機をお借りしました(M井さん、無理を聞いてくれてありがとうございます)。

早速見ていきましょう

Product Overview of EHR-M

まずはスペックと参りましょうか

タイプ
Ehrlund特許 "トライアングル・カプセル・メンブレン" コンデンサー・マイクロフォン
指向特性
トゥルー・カーディオイド
周波数範囲
7 ... 87,000 Hz
インピーダンス
いかなるインピーダンス値にも対応(周波数特性も変わりません)
セルフノイズ(絶対レベル)
7 dBA以下
最大入力音圧レベル
125 dB
動作電圧
48 Vファンタム電源,2.0 mA
コネクター
標準3ピンXLR
構造
アルミニウム製本体,高靱性ステンレス鋼製メッシュ
寸法
ø60 mm × 155 mm
重量
340g
生産国
スウェーデン

目を引くのは周波数特性でしょうか。グラフが、いわゆる「フラット」ではありませんが80kHzを優に超えています。ノイズレベルも低めと言えば低めです。

僕が見た動画は確か、

だったと思います。2:05あたりからのダイアフラムの共振の説明あたりで「なるほど!!」とトライアングルカプセルの合理性が理解できました。
また、様々なartistが使用しています。

ちょっと惜しいのがPADがないことでしょうか。-15dBのPadがあれば最大音圧も140dBまで行けるので嬉しいのですが...。まぁそのときにはEHR-Dを使え、ということなのでしょう。

Sound Impression of EHR-M

さて実際の音に参りましょうか。見た目よりも軽い印象です。

今回もENHANCED Audio M600に装着しての印象です。

for Guitar Amplifier

まずはGt Ampに試してみました。ただ、音圧の関係からOff Mikingでの使用です。アンプとの距離は1mくらいでしょうか。

いつも使うOn-Mikingびsettingも使用しています。切り替えながら聞いてみてちょっと驚いたのが「まんまそこで聞いた音が入ってくるイメージ」ということです。コンデンサーマイクのOff-Mikingでたまに感じるのが「マイクを立てた場所で聞こえていた音とControl Roomで聞いた音がちょっと印象が違う」ということです。マイキングが下手くそなんだ、と言われれば「はい、その可能性はもちろん捨てきれません...。」としょんぼりになっちゃいますが、EHR-Mは「このへんかなー」とマイクを立てた時に聞こえていた音がほとんど印象を変えずモニタースピーカーから出てきました。音質の傾向としてはちょっと冷たい、冷静な観点を持っている印象です。

今回のSessionはReampのsessionだったので(?)選択肢は多いほうがいいだろう、ということでOn-Mikingx2とOff-Miking x1(=EHR-M)で進んで行きました。

session後半の曲で「音にもう少し距離感がほしいなぁ」という話になり、「じゃあこれどう?」とChannelを切り替えたときに「あ、これっす!」という瞬間がありました。EHR-Mでなくてもそうなった可能性はありますがEHR-Mの持つポテンシャルも大きく影響していると思います。

for Vocal

Vocalの録音にも使用してみました。クラシック系のVocalの録音でこちらもオフ気味のセッティングです。

違和感なく、ストレスなく収録できます。最大入力音圧レベルが125dBなのでオンマイクはきついかもしれませんが今回はマイク本体で歪むようなこともなく収録が進んで行きます。

あまり録音に慣れていない方だったのですが、その方が「歌いやすいです」とおっしゃっていただけたのはEHR-Mの自然でニュートラルな特性のおかげだと思います。

as Ambient mic for Drums

今回他のマイクと比較する、ということができなかったのでC414B-XLSをPad=0dB,HPF:OFF,Cardioid設定にしてEHR-Mと並べてアンビとして収録してみました。もちろん同じHAを同じ設定にしての比較です。C414のHAの設定にした時にPTのメーターの振れ方は大きく差はなかったのでEHR-Mの感度はC414とほぼ同じか、やや(=1-2dBほど)高いかな、という感じです。

今回比較をしたことによりEHR-Mの個性が非常に見えてきました。

マイクポジションはKickから正面側におよそ1.8mほど高さは70cmくらいでしょうか。そこにマイクを2本並べて収録しました。

C414をRoomマイクに使用することはあまりないのでちょっとナンセンスですが、よく使用する(使用される)マイクの一つだと思いますのでReferenceにしようかなと。

自分で叩いて収録なので何度がGainを取り直しまぁまぁこのくらいでしょ、というあたりでドラムを15秒ほど叩き、試聴です。

マイクのメーカーが異なっていますので基本的な音質に差があるのは当たり前ですが、結構違います。モノラルでの収録なのでセンターに定位するのは当たり前なのですが、EHR-Mの方はそれでいて距離感がきちんと表現されています。Play Roomでなっているドラムがそのまま収録されている、という印象です。特に違いを感じたのはMid Rangeのあたりです。周波数特性のカーブが違うから当たり前だ、と言われそうですが、EQを施すことなくこの自然な音が得られるのは大きなメリットです。

2019/05/29追記

Liveの際にAcoustic Pfの収録に使用してみました。会場常設のAKG C414 x2, DPA VO4099Pを使用することもあるのですが、今回2本揃ったので持ち込んでみました。

楽器構成はA.Pf + Vocalという編成です。シンプルが故にそれぞれの楽器のウエイトは大きくなります。歌を中心に据えつつもきっちりPfを出したかったのですが、何らEQ処理などをすることなくすんなりと収まります。ちょっと拍子抜けしました。定位も自然に広がり何ら問題なくリハが終了し、本番に突入です。

マルチで収録したdataを聞いてみたのですが、ナチュラルでマイクの存在を感じさせない音質というと少しは伝わりますでしょうか。

マッチングペアでは無いのにステレオイメージが美しく、上の動画で紹介されているLinearな位相のおかげなのでしょう。

Afterwords

昔何かの資料でラージダイアフラムとスモールダイアフラムの基本的な特性の比較を見たことがありますがそれは下記のようなものでした。

ラージダイアフラムスモールダイアフラム
感度高め低め
歪率高め低め

というものだったように記憶しています。

Ehrlundがトライアングル・カプセル・メンブレンで成し遂げたのはおそらくラージダイアフラムで低歪率ということなのでしょう。

非常にストレスのない音が得られます。

DsのOverheadやPf、Acoustic Gt、あとOrchestraなどの収録にも威力を発揮しそうです。

と同時に出ている状態をまんまキャプチャーしてくれる印象ですのでDrummerの演奏が悪かったりマイキングがまずいとそれもそのまま入ってくるでしょう。

是非ともEHR-D,-E,-M1も国内に入ってきてほしいものです。*1


*1:2019年5月、EHR-D,-E,-M1の国内販売が決定!

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